空飛ぶ広報室

□If〜決意
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「そんなとき、比嘉さんから連絡を貰ったんです。本当にこのままでいいのかって」

 比嘉は言った。

『鷺坂室長も、片山三佐も柚木三佐も槙三佐も、空井一尉には稲葉さんしかいないと思っています。もちろん稲葉さんにも空井一尉しかいないと。でも空井一尉にもう他にいい人がいれば……話は別ですが……』
『いません。僕はずっとあの人が……』
『なら、何を迷う必要があるんですか?勇猛果敢・支離滅裂。それでいいじゃないですか』

 その言葉にハッとなった。
 勇猛果敢・支離滅裂。それが自分たちだ。

「やっぱり駄目だって……このままじゃ、やっぱり駄目だって……」
 空井はリカの腕を握っていない方の手で拳を作り、はっきりと言った。

「でももし稲葉さんに今恋人がいるなら、幸せなら……告白してきっぱり振られようと思って今日来ました」
 
 振られてもいい。ただ自分の気持ちを伝えるためにここに来た。 
 今まではっきり言葉にしたことがなかった。
 本当はいろんなものを抱えてしまった自分がリカに拒絶されることを恐れていただけなのだ。
 
 しかしリカは目を伏せたまま呟くように言った。
「……恋人なんて……いません。本当に幸せでもないです……」

 そして顔を上げると、
「だって空井さんがいないのに、幸せになんてなれるはずないじゃないですかっ!!」
 涙を流しながら叫ぶように言った。

 そんなリカの姿に空井の胸が更に熱くなる。
 
 この人が好きだ。本当に好きだ。
 もうこの想いを止めおくことなど出来るはずがない。

「僕っ、稲葉さんのこと、幸せに出来るかどうかわからないけどっ」
「私の幸せはっ」
 リカは空井の言葉を遮った。
「私が決めます」
 リカは泣き笑いの顔で高らかに宣言した。

『だって空井さんがいないのに、幸せになんてなれるはずないじゃないですかっ!!』
 リカは先程こう言った。

 それは自分と共に生きることが幸せなのだと決めてくれたのだ。

「はいっ!!」
 空井は満面の笑みを浮かべるとリカの腕を引き寄せ、抱き締めた。

「稲葉さんっ、僕は稲葉さんを本当に幸せに出来るかわかりません。それでも稲葉さんと一緒に人生を歩みたい」
「私の幸せは……あなたと一緒に生きることです」
 リカは空井の首に手を回し、空井の肩に顔を埋める。
 初めて抱き締めたのに、何だか懐かしさのようなものを感じた。
 やっぱり、こうなるべきだったのだと、心の底から感じた。

「……僕はもう逃げません。あなたを絶対に離しません。同じ過ちはもうしません」

 一生あなたと共にいたい。

「だから結婚して下さい」
「……はい」
 
 空井の一世一代のプロポーズをリカは即答で受けた。

 ああ、なんて回り道をしてしまったのだろう。

 空井は逃げていた自分の不甲斐なさを呪うと同時に、今までずっと自分を想ってくれていたリカに感謝した。

 身体を離し、幸せそうな笑みを浮かべるリカに空井は目を潤ませながら言った。

「二秒……下さい」

 そんな空井にリカは笑った。

「二秒と言わず、何秒でも」

 空井は嬉しそうに微笑むと、頬をほのかに赤らめたリカに顔を近づけた。

 二度目のキスは二秒より長かった。


 でもこれからは時間の長さなんて関係ない―。


 end

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