空飛ぶ広報室

□キスの理由
1ページ/3ページ


「空井さん、聞きたいことがあるんですけど」
「なんですか?」

 二年間の別離を乗り越え、無事婚約した空井とリカは、松島の空井の部屋で甘いひとときを過ごしていた。
 するとリカが不意に思い出したように口を開いた。

「北海道の……」
「北海道……?……あ……」
 
 北海道。それは空井にとって、まるで青春時代に経験したような甘酸っぱい思い出。

「……はい……あのことなんですけど……」

 やっぱりあのときのことか。
 ちょっと照れるな。あ、稲葉さんも顔真っ赤。照れてるんだ。
 照れてる稲葉さんも可愛いなあ〜。

 なんてことを思ったり。

「空井さん?」
 少し物思いに耽っている空井をリカは怪訝そうに見る。
「あ、はいっ、何でしょう!?」
 リカの声で現実に引き戻され、少し上擦った声を上げた。

「……なんで……」
 リカは視線を逸らし、真っ赤な顔で言い辛そうにしている。

「なんであのとき……キス……したんですか?」
「あ……」

 やはりあの瞬間を思い出すと顔が熱くなる。
 二秒という短い時間だったけど、確かにリカの唇を直に感じた。
 それは柔らかくて、甘くて……。

 あのとき、彼に火を点けたのは何だったんだろう?
 突然のキスにリカは困惑と同時に嬉しい気持ちもあって。
 たった二秒でも、かなりパンチのあるキスだった。
 ロックオンされて完全に撃ち抜かれた。

「あ……あれはですね……」
「はい……」
「稲葉さんの話を聞いて……こう、溢れてきちゃって……」
「何がです?」
「この人にキスしたいって気持ちが」
「……だから……なんで?」

 そこでキスなんだ?何であのスピーチでキスに至るのかを教えて欲しいのだが。


『どんなに失敗しても、なりたいものになれなくても、人生はそこで終わりじゃない。どこからでもまた、始めることが出来る』


「稲葉さんの言った言葉が、胸にきちゃって……」
「胸にきちゃったらキスなんですか?」
「あのときは。もうどうしようもなくなって」

 少年のようにはにかむ空井にリカの胸は高鳴る。

 ちょっと!! いい大人の男がその仕草っ!? しかも似合うんだけどっ!!

「ああ、この人のこと、本当に好きだなって思ったら……つい?」

 うわあ、さり気に告白されちゃった?
 いや、プロポーズされたんだから今更か……。
 てか『つい』でキスしちゃうって!? なんなの、この人!?

 そんなことを考えながらリカは空井の顔を上目遣いに見る。
 しかし解せないことが……。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ


©フォレストページ