踊る大捜査線

□Imitation couple 〜始まり〜
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「重点張り込みで夫婦役!?」
「はいそうです」
「俺とすみれさんが?」
「はいそうです」
 目を瞠る青島とすみれに真下はニコニコしながら返事した。

 署長の真下から刑事課の応接室に呼び出された青島とすみれは、真下にある任務を申し付けられた。
 それが重点張り込みで夫婦役。

「何であたしなの!? 盗犯係の仕事で忙しいんだけど」
 すみれは憮然として言う。
「だって青島さんの奥さん役はすみれさんにしか出来ないでしょ?」
 真下はキョトンとして首を傾げる。
「夏美さんだっているじゃないっ!?」
「夏美さんは人妻ですから。何か間違いが起こったら大変です」
「起こるわけないだろっ!?」
 冗談じゃないとばかりに青島は叫ぶ。起こってたまるか。女青島と言われる夏美だ。強行犯係の母親的ポジションで、どちらかと言えば母親のような妹という存在。既に人妻で二児の母。申し訳ないが、夏美をそんな目で見たことも、これからも見ることもない。
「その点すみれさんはオッケー」
「はあ!? 何であたしならいいってのよっ!?」
 一方すみれは顔をしかめて真下に凄むように言う。
「何か起こったっていいでしょ?お互い独身なんだから。てかもう見るからに夫婦なんだしいいじゃない?むしろ間違い大歓迎っ!!」
 満面の笑みで手を大きく広げて「さあ、どうぞっ!!」と続けて言う真下に頭が痛くなる。
「歓迎するなっ!! 署長がそんなこと言っていいのっ!? つか起こるわけないでしょっ!!」
「……起こるわけないんだ……」
 何故かシュンとする青島は二人に黙殺された。というより気付かれなかった。
「まあそこはすみれさんが青島さんの毒牙から自分の身を守って貰って……ってすみれさんなら大丈夫でしょ?青島さんくらい軽く投げ飛ばしちゃうでしょ?」
「そうだけど」
「そうなのっ!? 軽くヘコむよ?てか間違い大歓迎とか言っといて俺の毒牙から身を守れって意味わかんないしっ!!……って毒牙って何だよっ!?」
「すみれさ〜ん」
「やあよ」
「え!? 無視っ!?」
 しかしまたも青島の叫びは聞き流された。
「お願いしますよ〜すみれさんにしか出来ないんですから〜」
 真下は拝むように訴える。
「……何奢ってくれる?」
 すみれは腕を組み、真下を睨む。
「仕事ですよ?」
 真下は引きつった笑みを浮かべながら言うが、すみれのその眼力に思わずたじろぐ。
「な、に、奢ってくれるの?」
 先程よりも低音で凄むように言う。
「……ラーメン……?」
「な、にっ!! 奢ってくれるの!?」
「……フレンチ……ランチで……」
「のった!!」
 目をキラキラと輝かせてすみれはやったとばかりに小さくガッツポーズをした。
「……てか俺放置……?」
 そんな二人のやり取りをただ見ているだけの青島。自分の訴えも軽く流され、ただ呆然とするだけだった。
「じゃあこれ資料です」
 そんな青島の様子を無視するように真下は青島とすみれに資料を渡す。そこには重点張り込みの各自の設定が書かれていた。
「はいはい。へえ、唐揚げ屋かあ」
「最近ハヤリでしょ?」
 何だか楽しそうに言う真下に、『お前の趣味か?』という視線を投げかけるが効果はなし。
「これ、誰が作るの?」
 唐揚げ店を出すのだから誰かが調理をしなければならない。すみれは正直料理にあまり自信がない。
「あ、別に最初っからすみれさんに期待してないから」
 青島はヘラヘラと笑いながら言った。
「なんですって!?」
「こりゃ失敬。てか大丈夫、俺がやるから」
「青島くんが?」
「やるなら徹底的にやってやっかんな!!」
「ちょっと……気合いは入りすぎて逆に心配なんですけど……」
 無駄に気合いを入れる青島にすみれは嘆息する。
 そんなすみれの様子などお構いなしの青島は資料の設定を読み上げる。

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