踊る大捜査線

□dwell
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 まだ夜明けには早い頃、ふと目が覚めた。
 確か寝るときは一人だった。
 彼の帰りを待っていたけれど、途中で睡魔に勝てずにベッドに潜り込んだ。
 しかし今、少し色の黒い腕にがんじがらめにされて、まるで抱き枕状態だ。

 昨日は定時で帰ることが出来た。
 だけど彼は裏付け捜査で出払っていて、あたしが署を出る頃もまだ帰って来なかった。
 とりあえず一人で帰宅する。
 彼とは半年前に結婚した。でも式はしていない。お互い忙しいからそのうち時間があれば……ということで写真だけ撮って、後は湾岸署で形ばかりのパーティーをした。 
 というのも、こちらがどれだけ拒否しても、署長をはじめとするあそこの署員たちはお祭騒ぎが基本大好きなのだ。
 式をしないのならこれくらいのことはさせろという署長の訴えに、もう好きにして、とばかりに半ば諦めモードで妥協した結果だった。
 しかし、大騒ぎではあったが心のこもったいいパーティーだった。

 結婚してからも異動はなく彼と同じ署で働いている。というのも、暴走しがちな彼のストッパーがいなくなるのは痛手だという署長と刑事課全員(+ほとんどの署員)の嘆願書が上層部に届けられ、それに室井さんの根回しもあっての異例の処置だということを聞いたが本当だろうか……。あまり知りたくない気もするが……。

 昔の傷の後遺症のせいで現場に出る回数が減った。内勤の仕事を増やして貰っているが、取調べはやっている。
 だから定時で帰れないことも多い。
 
 しかし昨日は珍しく早く署を出ることができたので途中でスーパーに寄り夕食の買い物をした。
 食べる方の専門で作る方はあまり得意ではないが、結婚するにあたりこっそり勉強していたりする。
 一応妻となった身だ。旦那様に自分の手料理を食べて貰いたいという、女心もあったりするのだ。
 帰宅するなり着替えて料理に取り掛かる。
 彼の帰りが遅くなるかも知れないから温めてすぐに食べれるものがいいだろう。
 そう思いシチューにした。

 待てど暮らせど彼は帰って来ない。
 ああ、これは手間取っているな。長年の付き合いと経験からそう判断する。
 そのうち自分のお腹が限界まできたので先に食べた。
 食後、とりあえず食器を洗い、入浴してテレビを観る。
 久しぶりにバラエティーを観ているとだんだん睡魔が襲ってきた。
 ああ、もうダメだ……。
 待ちきれず、先にごめんね、と呟きながらベッドに潜り込んだ。

 そして今、彼の腕が自分を抱え込む形になっていて身動きが取れない。
 いつ帰ってきたのかしら?
 帰ってきた気配で目が覚めそうなものなのに、全く気が付かなかった。
 それほど疲れていたのか……。
 でも最近妙に眠たいのは気のせいだろうか?そう言えば何となく身体もだるい。
 そうだ。きっと疲れが溜まっているんだろう。そう自己完結することにした。

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