踊る大捜査線
□After all I love you―やっぱり愛してる―
2ページ/2ページ
先に休憩に出たすみれが屋上で夜空を見上げていると、青島がすみれの元まで走ってきた。
「そんなに走らなくてもあたしはもう逃げない……っぶっ!!」
いきなり青島に捕まり、そのまま抱きすくめられた。
「やっと抱き締められた……」
「ホントにもう……」
すみれは青島の背中に腕を回す。
「一回さ、走り出したら止まんないんだよね、俺」
「よく知ってる」
「だからさ、一回すみれさんを好きだって口に出しちゃったらさ、もう止まんないんだよね」
「青島くん……」
ああ、愛されてる……しみじみと実感する。
今まで全くそういう言葉を口にして貰ったことなどなかった。元より、同僚以上恋人未満でそんな甘い雰囲気など皆無だった。
そう思っているのは当人たちだけなのだが……。
「……あたしも……好きよ……青島くんのこと」
青島の胸に耳を当て、溢れそうな想いを告げる。
青島の鼓動の音が少し早くて、でもとても心地いい音。
彼が生きてここにいるという証拠。
「好きって言われるのってさ、こんなに嬉しいことなんだね」
青島はすみれの黒髪に唇を寄せる。
「本当に好きな人に言われるから嬉しいのよ」
「だね」
そして抱き締め合う力を互いに強めた。
「やっぱり愛してる。すみれさん」
『やっぱり愛してる……仕事』
あのとき、この命が助かったとわかったとき、彼女が言ったセリフ。
そして、この間、気持ちを告げあったときにも彼女はこのセリフを引用した。
今度は最後の部分を変えて。
「あたしも……やっぱり愛してる……青島くん」
そしてあのときのセリフを言う。
やっぱりこのセリフが一番気持ちが伝わる気がする。
そして二人、微笑み合った。
「……倉庫のときよりラブラブだ……」
そんな二人を屋上の扉の陰に隠れて見ている不審人物が一人。
「……てか僕って何でいつもこの二人の出歯亀みたいなことしてんだろ……?」
その不審人物は真っ赤になりながら、そうボソッと呟いた。
end