踊る大捜査線

□Telepathy−以心伝心−
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 すると休憩室に誰かがいることがわかった。

(あれ? 係長……?と……恩田さん?)

 すみれは缶コーヒー片手にベンチに腰掛け、青島はその隣に座ろうとしていた。

「もう5分遅かったら帰っちゃおうと思ってたわよ」
「なんだかんだ言ったって、すみれさんいつも待っててくれるじゃん?」
 すみれの隣を陣取った青島は、その顔を覗き込んで微笑む。
「ホント青島君、突然誘うのやめてよ」
 眉根を寄せて言うすみれに、青島を苦笑した。
「だってさっき思いついたんだよ。すみれさんのおすすめのイタリアン食べたいな〜って」
「あたしの予定、お構いなしね」
 ……まったくと嘆息し、青島を睨む。
「でもさ、すみれさんも今日イタリアンな気分だったでしょ?」
「……まあ、実はそうだけど……」
 すみれは青島に読まれていたことが面白くないような、それでいて嬉しいような、そんな複雑な顔をした。
「すみれさんのお誘いが来る前に言っただけ」
 悪戯な顔で青島は言った。
「最近それ多いよね?」
 一回や二回ではない。このところこういうことが続いている。
「なんとなくわかっちゃうんだよね。すみれさんもわかってくれるからいいじゃない?」
 青島がなんとなく思いついて口にしたことも、すみれはその言いたいことを理解してしまう。
 だから先程のような掛け合いであっても結局何が言いたいのかわかってしまうのだ。
 シチュエーションも時間もまちまちで本当に突発的に言い出すのに、それでも何故だかわかってしまう。
 それもお互いで、例えすみれが突然言い出したとしても青島にもわかる。

「なんとなくあたしもわかっちゃうのよ。ああ忌々しいっ!!」
 頭を抱えて呻く。
「何それ? 傷つくなあっ」
「こりゃ失敬」

 しかしすみれはすぐに真剣な顔になって言った。
「……なんでわかるのかなあ? 青島君てエスパー?」
 その言葉に青島は苦笑する。
「それを言うならすみれさんもだよ」

 それはいつも君のこと、考えてるからだよ。


 ニコニコと優しげな笑顔を浮かべる青島の顔が何故だかいつもと違って見えた。
 いつも愛想はいい方だと思う。事件になると真剣な顔になるけど、それでも普段はやっぱりヘラヘラ(?)というか飄々としてる方で……。

 なのにあの雰囲気は一体?

 その二人の様子を見ていると、何だか顔が熱くなった。
 別に愛を囁いているとかイチャついてるとかそういうことをしているわけではないのだが、二人の発する空気が何となく、部外者には触れることの出来ない空気というか……。

 ダメだ、見ている方が恥かしい……。

 二人だけの世界に割って入る勇気もなく、先輩たちに文句を言われることを覚悟して和久はそのまま刑事課に引き返した。



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