踊る大捜査線

□約束
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「でもさ、デートするならすみれさんとしたいな」
 とりあえず気を取り直して口を開く。
「有休とって?」
「結局有休とってどこにも行けなかったしね」
「そうよねえ……なんだかんだ言って忙しかったしね」
 はあ……と、すみれは大袈裟な溜息を吐く。
「すみれさん。退院したらさ、まず俺とデートしよ?」
 青島はすみれの顔を覗き込んで言った。
「青島君が一番?」
 目を見開いて、キョトンとした顔ですみれは聞く。
「うん」
「え〜……」
 顔を歪めて唸る。
「なに? 嫌?」
「嫌じゃないよ。キャビア食べさせてくれるなら」
 その後に『誰でもいい』という言葉が聞こえてきた気がしたが……気のせいだろうか?
「キャビアじゃなかったら?」
「え〜……」
 先程以上に顔を歪めて唸る。
「ちょっと……軽くヘコむよ?」
「ウソよ」
 そうニッコリと笑う彼女はとても魅力的で、青島の心臓は高鳴る。
「やっぱり?」
 思わず嬉しくてそう言うと、
「なに? 自惚れ?」
 悪戯な顔で言われた。
「ちょっとね」
 ちょっとくらい自惚れてもいいじゃん……胸中で呟いてみたり。
「あたしが愛してるのはキャビアよ?」
「あれ? 仕事じゃなかったの?」

 あの時のセリフを思い出す。

『やっぱり愛してる…………仕事』

 あの時、青島は自分のことを愛してると言われたのかと思った。
 こんなときにどう反応していいのかわからなくて、でも『仕事』と言われて少しガッカリしたり……。

「今の一番はキャビアってことで」
「俺の割り込む隙ねえなあ」
 青島は冗談めかして言った。でもそれは本音で。

「最初っからそのつもりないくせに」
 少し膨れっ面。そんな顔するから自惚れるんだよ……。

「そんなことないよ? 隙さえあれば。でもすみれさん隙作んないもんね?」
「当たり前じゃない。それでも無理矢理何とかしようって男じゃなきゃ嫌よ」
 胸を張って言うすみれが勇ましくて。
 青島は思わず苦笑する。
「手強いね。相変わらず」
「でもあたしだって弱ってるときくらいあるわよ?」
「お腹空いたとき?」
 おどけて言う。
「なに?」
「こりゃ失敬」
 笑うとすみれは拗ねたような顔をした。

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