踊る大捜査線

□As usual
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「愛してるよ、すみれさん」
「あら? あたしもよ青島君」
 突然の青島の告白に、すみれは振り返り、同じく告白で返した。
「よかった。俺の片思いだったらどうしようかと思った」
 途端ホッとした顔を見せる青島。
「そんなことあるわけないじゃない?」
 そんな青島にすみれはニッコリと笑った。
「でね、愛しのすみれさん」
「なあに?」
 小首を傾げ、笑顔のまま返事する。 
「俺のこと、捨てないよね?」
 捨て犬のような目で青島はすみれを見つめた。
「……ごめんなさい」
 すみれは荷物を抱え、目を逸らす。
「なんでっ!? 俺、こんなにもすみれさんのこと愛してるのにっ!? 君も愛してるって言ったじゃないかっ!?」
 青島は勢いよく立ち上がり、すみれに訴えた。
「……それとこれと別なのよ。わかって、青島君」
 青島に向き直り、すみれは叫ぶ。
「なんでだよっ!? わからないよっ!!」
 青島は頭を振る。

「……あたしの愛は高いのよ、青島君」
 その瞬間、すみれの瞳がキラッと光った。

「……わかりました……奢らせて頂きます」
「最初っからそう言えばいいのよ」
 すみれは荷物を置いて青島の席まで行き、右手を差し出す。
「すみません……」
 そう呟いて書類を数枚すみれに手渡した。

「で? 係長なのにまだ書類溜め込む癖抜けないわけ?」
 はあ……と大袈裟に嘆息しながらすみれは言った。
「だって……忙しいんだもん……」
「40過ぎた大の男が『もん』とか言わない。気持ち悪い」
 自分の席に着きながら、すみれは顔を歪めた。
「酷い、すみれさん。こんなに愛してるのに」
 わざと泣きそうな顔をしながら言っても、
「あたしも愛してるわよ。だから高いもの奢ってね」
 すみれは青島に背中を向けたまま書類にペンを走らせ、平然と言ってのけた。
「……この借りは給料日明けに……」
「忘れないからね」
 間髪入れずに言う。
「……へい」
「でも今日のはまた別だからね」
「はい、わかってます……」
 追い討ちをかけるすみれに、青島は素直に頷いた。


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