踊る大捜査線

□素直になれたら
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前編

 スーパーでお弁当でも買おうかと思ったけど、結局何も買わなかった。
 
 食欲がない。何も食べたくない。

 早く帰って寝よう。寝ている間は何も考えなくてもいいし。

「さむっ」
 真冬の寒風が身に沁みる。

 玄関を開け、コートのままベッドに倒れこむ。

「……疲れた……っつ……」
 何だか胸が痛む。

 傷か……。あまりに寒いと今でも傷が痛む。

 この傷があたしたちを繋いでいたのかな?
 
 そんな気もしなくもない。

 枕に顔を押し付ける。
 このまま寝てしまおうか。うん、そうしよう。
 
 そんなことを考えていると、何だか微睡ろんできて、そのまま眠りに落ちた。

「……ん?」
 携帯が鳴った。
「……メール?」
 液晶画面を見る。
「青島君……?」
 時計を見れば0時少し前。
 こんな時間に何の用よ……?
 メールを開けるのを躊躇する。
 何が書かれているか……何となく考えただけでも震えが出そうで……。
 それでも、開けるしかないんだ……。

「……何……? これ」

 液晶画面を見て、慌てて窓を開ける。
『部屋の外見て』

 表の街頭の下に寒そうに背中を丸めた青島君が立っていた。

「何……してんのよ……?」
「うん……ちょっと……」
「ちょっと待って」

 あたしは慌てて部屋を出て青島君のところへと走った。

「何よ、どうしたの?」
「……ちょっとね……ねえ……」
 何だか青島君の表情が曇ったように見えたのは気のせい?
「なに?」
「どっか……行ってたの?」
「……ううん。ずっと家にいたけど……」
「だってその格好」
 全く着替えていない。コートも着たままだし、今帰ってきたって感じにも見えなくもない。
「あ……家に帰ってそのまま寝ちゃったから……」
 そのとき、なんだか青島君の顔がホッとしたように見えた。
「そっか……」
「で、何の用なの?」
「あ、うん……」
 なんだか歯切れの悪いように思う。
「なに……?」
 青島君はカバンから綺麗にラッピングされた長細い箱を取り出すと差し出してきた。

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