とくべつ

□Medium Story 1
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ぱっと明るくなるステージ。
ライトで照らされた二つの人影。

瞬間、客席から歓声が上がる。

小さなライブハウス内。
薄暗い中で蠢く観衆。
揺れる、色とりどりのペンライト。

こんな異様な景色を、こんな場所から拝むことになろうとは、夢にも思わなかった。

この、明るく照らされたステージの上から。

こんなフリフリの衣装を着て。


隣に立っているピンクの衣装の彼女がマイクを構える。

それに習って、マイクを胸の辺りまで持ち上げる。

「1、2、3」と、彼女は上下に小刻みに揺れながら、小声でカウントをとる。

ひとつ、高く響く音。
曲の始まりの音。

「いっくよぉーーー!」

その声に応えるように、会場が沸いた。

もう、後戻りはできない。

引きつる顔を無理矢理笑みに変える。

息を吸って、歌い出す。

♪ドキドキ

ドキドキしてるよ。
今まさにドキドキだよ。

♪目覚ましが鳴って 遅刻しそうな朝だ

あぁ、もう
どうにでもなれ。


七里(しちり)マリ、19歳、現役大学生。

今、アイドルやってます。



第1話 異世界との遭遇



大学生活2年目の春。

ごく普通の大学生の私が、何故こんな状況に陥っているのか。

今日の朝はいつもと変わらない、気持ちのいい目覚めだった。
朝食のトーストを食べ、身支度を整え余裕を持って家を出た。

……あ、違うな。

今日は朝から寝坊したんだった。

その辺にあった服を急いで着て、寝癖でボサボサの髪は諦めた。
髪短いから中々直らないし。

パンを焼く時間すら無くて、食パンをそのままくわえて家を出た。
 
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