HQ!!夢

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 高校に入って最初に迎える土曜日。
立花は再び大沢と一緒に第3体育館に来ていた。
金曜日で仮入部の期間が終わり、入部する1年生は今日から本格的に部活に参加するようになるからだ。
「新聞部にも立花さんの他に2人入ってくれたから、僕も安心して卒業できるよ」
 下駄箱で体育館用シューズに履き替えながら、大沢はしみじみと言った。
「私も嬉しかったです。でも3年生が卒業しちゃうと思うと、今はまだ不安だらけです・・・」
「今学期中には慣れてくるよ〜」
 体育館に入ると、部員たちは昼休憩の最中だった。
監督とコーチがちょうど昼食から戻ってきたので、早速挨拶に行った。
「そうだ、君たちにも先に言っておこう。急な話だが、火曜の放課後に練習試合をすることになった」
「おぉ!どことですか?」
 大沢が嬉々として尋ねた。
「烏野って高校知ってるか?」
 それを聞いた瞬間、立花の表情が曇った。
「名前は知ってますけど、正直バレーで強いイメージはあんまり・・・」
「以前は全国まで行くくらい強かったんだがな。監督が高齢で引退されてからパッとしないところになってしまった」
「それでも向こうの申し出を受け入れて練習試合を組んだのは――」
「影山くんがいるから、ですか?」
 コーチの言いかけた言葉に立花が続いた。
「・・・そうか、立花は北一出身だったな」
 コーチは少し驚いていたがすぐに落ち着いた。
「だから条件として、影山をフルでセッターとして出すように要求しておいた」
「影山くんってそんなに強い人なんですか!」
「あぁ、だが問題もあってな・・・火曜に見れば分かるだろう」
 3人の険しい表情を、大沢は不思議そうに見比べた。
「・・・分かりました、火曜もお邪魔しますね。まずは今日の新歓試合、よろしくお願いします!」


 観覧スペースに上がると、他にもちらほらと生徒が試合を見にきていた。
「新歓試合は毎年恒例なんだ!新入生と上級生の混合チームを作ってやるんだよ」
 チームは全部で4チームに分けられ、2コートで2試合同時に開始されるようだった。
「及川先輩と岩泉先輩、別のチームなんですね」
 2人はネットを挟んでアップを取っている。
「去年も一昨年もそうだったんだよ!去年は一くん、一昨年は徹くんの方が勝ったんだけど、今年はどっちかなぁ」
 試合開始の笛が鳴って、及川が最初のサーブを打ち込む。
中学の時にも立花は見てきた、及川のジャンプサーブ。
しかし今目の前で見るそれは、当時とは別物だった。
物凄い勢いで打ち込まれたボールは、後衛の岩泉へ吸い込まれるように向かっていく。
重みのある大きな音を立てながら、ボールは岩泉の腕にあたって跳ね上がった。
「どっちもすごい・・・」
「立花さん!写真も忘れないようにね」
「あ・・・はい!」

 どちらのコートも一進一退の展開が続き、セットカウント1-1で最終セットを迎えた。
及川のチームがわずかにリードし、20点台に入ろうとしていた。
岩泉側にとって厳しい局面、チャンスボールがきれいにセッターへ上げられた。
案の定トスは岩泉へ上げられたが、彼の前には3枚ブロック。
それでも岩泉は強気に打ち抜き、ボールはブロックを抜けていく。
後衛に回っていた及川がなんとか拾ったが、ボールはそのまま岩泉側へ返っていく。
2度目のチャンスボールをきっちり岩泉まで繋ぎ、再び強烈なスパイクがブロックを貫いた。
今度はフォローしきれず、岩泉側に1点が入った。
だが――

「及川、お前・・・右足・・・!」



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