HQ!!夢

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 2年生になると立花は張り切って新入生の勧誘に勤しんだ。
男子部員の人数は例年通りの人気ぶりだった。
及川がいなくなったこともあってマネージャーに対する顧問たちの制限は緩くなり、結果的に4人の女子が立花の後輩となった。
 一方影山は、セッターとして練習試合に出してもらえる機会が増えて、順調に経験と鍛錬を積んでいった。
他の2年生も実力のある選手は試合に出場するようになっていった。


 夏休みのある日、北川第一同様に強豪と謳われる千鳥山中学との練習試合が行われた。
学年ごとにチームを編成して、学校対抗で試合をした。
これまでにも同学年同士の練習試合の経験はあるが、2年生はずば抜けた才能を持つ影山の独壇場となっていた。
しかし、今回は相手の実力もなかなかのもので、試合は接戦となっていた。
いつものようにリードできないもどかしさと焦りからか、影山のプレーが加速していくように見えた。
チームメイトの顔に困惑の色が浮かんだが、なんとか1セット先取することができた。

「影山。さっきの最後のトス、あれはなんだ」
 ミドルブロッカーの金田一が最後の1点を決めたが、ギリギリ触って相手のコートに入れたものだった。
「あそこなら点を取りに行けると思ったからああしたんだ。お前だってそれくらい分かるだろ?」
「だからってスパイカーが打てないようなトス上げていいわけねーだろうが!」
「あれくらい俺なら打てる」
「お前っ、ケンカ売ってんのか!?」
「2人とも落ち着いて!」
 慌てて立花が間に入り、影山に掴みかかろうとしていた金田一を制した。
監督からももっと冷静にプレーするよう忠告された。

 試合は5セット行われ、2年生は結局3-2でなんとか北川第一が勝利した。
影山のプレーが急加速することはなかったが、度々無茶ぶりトスが挟まれていたのはなくならなかった。
「影山くん、今日どうしちゃったの?」
 片付けをしながら影山の姿を見つけるなり、立花は声をかけた。
「どうもしねーよ」
 影山は立花の方にチラリと視線を向けてから、ぶっきらぼうに答えた。
「あんな鋭いトス、今までなかったでしょ」
「千鳥山が強かったから、ああしないと勝てなかったんだよ」
「でも他のみんなやりづらそうだったし――」
「それはあいつらの練習不足だ。俺だってもっとサーブとか練習しなきゃいけないのは同じだ」
 苛立ちが言葉の端々から滲み出ていた。
 本当にそうなのだろうか、練習していけばあのようなことは無くなるのだろうか。
疑念を抱きながらも立花はそれ以上何も言えなくなってしまった。


 その年の最後の大会で、北川第一は県内ベスト4に終わった。
3年生の最後の晴れ舞台では影山たちの出る幕はなかった。
やはり先輩たちは悔しそうだったが、その思いを影山たち2年生に託し、優勝を期待してくれた。


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