拍手夢れびゅう

…笑わないで下さい。
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「あーっ、」

『、何ですか、
やかましい』


「竜崎、ほらっ、雪だよ雪!」

わー、

「ねー見て、積もったよ」


息でガラスが曇るほど、
至近距離に近づいて報告してくる。


『あなた、いくつですか』

「わー、……久しぶりだなぁ」


都会では確かに珍しい。

3月になって雪。

いよいよ地球も乱れてきていると感じる。




『あなたの故郷は、
雪など珍しくないでしょう』


「なに言ってんの!当たり前じゃん、
一年の半分は雪に埋まってるって表現、
すごい共感したもん!」


『…なんの話で
誰が言っていたんですか
急に言われても知りません』



「この前マンガ貸したじゃん!
NANAで、寒がる奈々に
ナナが上着貸すシーンでさ、ゆってたじゃん!」

『ああ……、


しかし主語がないんですよ
英語でもあったでしょう、S、V、Oって』



「あのマンガはさ、
あたしの大好きなバンドも恋も人生も詰まってるの!

あ、今度、あれも貸してあげる!

あのねー、名作だよー、」


『……また脱線しました』



やれやれだ。


落ち着きというものを
神はこの人に与える気はあったのだろうか。



好きなものがたくさんありすぎて、

彼女の心を占める重要項目が多々ありすぎて。



……自分は何番目くらいなんだろうと考える。




女性は、
好きだとか愛してるだとかを口に出して聴きたがると聞くが。


それは、

私にとっても同じである気がする。






彼女ときたら、
あのバンドの新曲がどうだの、


次の旅行は飛行機に乗って高飛びしたいだの、


本屋で見た料理本に触発されて作ってみただの、


アロマをやっている友達からイロハを習ったからやってみたいだの、



ありとあらゆることで、
彼女の人生はめいっぱいなのだ。


その中に自分はスペースを持って存在しているのか、


果たして疑問である。




『…あの』


「雪遊びしたいの?んー、これじゃぁ、ちょいと足りないよ〜」



『いや…
それは貴女の願望でしょう』

「あ バレた」


『いいですね、毎日楽しそうで』



「まあね!
だって、あたしの傍には大好きな竜崎がいるからね!」


にこっ。

と笑って、

再び窓に張り付いて外を見る彼女。






『………』


あれ。

私、

いま
さらっと大好きと言われたような。


「ん?」


『…貴女、私のこと大好きなんですか』



「なに言ってんの!あたりまえじゃん」



『…
貴女には愛すべきものがたくさんありすぎて私はランク外なのかと思ってましたから』



「んー、

ある意味ランク外?」



『………凹みますね』



だって、

「竜崎がいなくちゃ、
あたしはこんなに安心して色々出来ないよ」



竜崎がいるとねー、


「落ち着くの。
安心して、笑える。

ここらへんに、」

と胸を指す。



「あたしの中に、
もう竜崎、住んじゃってるから。」



今更ランクがどうのって、
ねぇ?









『………』


『つまり……

なくてはならない存在だと』

「、いうわけですね!
ハイ。」




だって大好きだもん!




















(なんで元気ないの)


(…や、
平静を保ってるんですお気になさらず)


(あたしが竜崎を大好きって言ったから?)



(……貴女ね、
なぜそう改めて、
恥ずかしいことを、
そう)


(なんでよー、
あたしが竜崎を大好きなのなんて、
とっくの昔からじゃない、
変なのー)




(……イヤ
だからですね、


そういうふうに何度も連呼されると非常に)


(非常に?)


(非常に………

……


……うれしいです…)


(ふふ、よろしい!)







(………くやしい。)


















色ぼけ竜崎。




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