拍手夢れびゅう

…無視しないで下さい。
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「竜崎さん、」

『はい』

「どうして、
いつも私が鍵をかけてから居なくなるの?」






















捜査のための一室。

その他に、
女性捜査員のために仮眠室として別室をあらかじめ設けていた。




私はここで、
竜崎さんのパートナーとして仕事をしている。



………といっても、
近頃は激務を極め、一ヶ月は帰宅していない。

そのため、



仮眠室で暮らしている、

というニュアンスが正しいと思われる。










毎夜、
竜崎さんは私をきちんと部屋まで送ってくれる。
ワンフロア貸しきっているのか、
誰もいないんだけれど。

(………確かめたことないけど、

……ここのマンション全部…
貸しきってたりするのかな、…………。)



おそろしいことを言いそうなので竜崎さんの懐具合は聴けない。


庶民感覚とはかけ離れていそうだ。



セレブな彼は、
そんなこんなで私を部屋まで見送ってくれている。







よくわからないけれど、
きっと彼は英国紳士なのだろう。
女性の一人歩きやキラに狙われる可能性やら、なんやらかんやら、

あの頭のなかには様々な思考がきっと詰まっていて。


よくはわからないけれど、
私を見守って下さっていることは間違いない。


……と、思われる。




















「そういえば竜崎さん、」

『はい』


「どうして、
いつも私が扉の鍵をかけてから居なくなるの?」






竜崎さんは、
私が部屋に入ったあと、さらに内鍵をかけるまで扉の外で立っているみたいなのだ。




当初、
「入り口にあんな大袈裟な識別キーがあるんだ、
内側のセキュリティは守られているも同然じゃないか。」

と内鍵をかけずに休んでいたらたいそう怒られたものだ。





「ここには警察の皆さんがいらっしゃいますから、
たぶん安全かと思って」

と口ごたえをさらりとしたら、




『……ありえません』

と一蹴されてしまった。










「竜崎さん、忙しいんだから、」

さ、
さ。と手で追いやる動作をする。
失礼のない程度に。



「私ひとりで帰れますし。だからあなたはこ『ダメですいけません私許しません』









この、人は。

頭がいーくせに、
融通が利かない。





「わかりました、ほら、入りました。」


玄関をあけて、部屋に入る。

「おやす、」





み、


の言葉はとっさに何処に飲んでしまったかわからないが、
とりあえず


私の口はただぽかんと開いたままだった。





ぎぅ、










ええと、




この人は


指揮官で

上司で

そんでもって


ここは職場で








あれ





なのに







なんであたし今







竜崎さんに抱きしめられてるんだろう、
















「………、あの、」


『こういう人が捜査員にいたらどうするんです』


ぎぅ、



「え」

『松田とか』



「は、ぁ」


『送り狼ってやつです』










だから、鍵をきちんとかけていただかないといけません




だから、
それを確認してから立ち去ってました










「えと、」



『はい』



「竜崎さんが、今まさになさってる、」


『はい』


「……。、ことが、……送り狼、
というやつなんではないかと」


思うんですが




「………あなたが心配してるのは、」





いわゆる


不法侵入してよからぬことをする

夜這い



というやつでないかと、







『そうですか日本語はむつかしいですね、』


ぎう、


ぎゅう。






「……えっ、と。」










『たいていその場合は、送り狼と夜這いはワンセットでしょうか』






「……………た、ぶん」

近いものはあるのではないかと思われ……ます。









『それは好都合です、』

にこりと笑って身体を解放される。



















(私、明日から送り狼になろうと思うのですが)


(え)




(よく手はずがわからないので、
送り慣れているあなたにさせていただきたいと思います)




(………えっと、それは宣言して、なるものなのでしょうか)
















頼みますよ、




と言われて数十秒後。









真っ赤な顔をして、

今日こそはあの部屋に行ってはいけない

全力で仕事を片づけなければと誓うのであった。

































(……終わらせたんですか、)
あの仕事の山を、


(はい、今夜は自宅に戻りますので)



(…………………)



(なんでしょうか)



(ああ、
私そういえば今朝から胃もたれと頭痛がしまして)


(いやいやいや
ケーキ何個食べたと思ってるんですかめちゃくちゃ元気だったじゃないですか、)




(私がそうといったらそうなんです、)



だからあなたに残業を命じます












(私を部屋まで送って下さいね?)












逆・送り狼です











(逆・送り狼コースでお願いしますワンセットですフルコースです)















(……………………)















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