拍手夢れびゅう

…蹴らないで下さい。
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『あの…、』

「ちょっと待って、まだ、」

『………』

「……」




『…………、あの。』


「待ってってば!
こ、心の準備ってもんが、」

『……あの、』

「だから静かに!…あああもぅ、どーしよ、てかどーしたらいいのよ」

『………、
(喋らせてほしい………)』








デザイナーの卵の学校に通う友人の頼みで、

『ウェディングドレスのパターンを作りたい』


となかば強引にモデルのような形でドレスを仕立てられた。


サンプルを着たそれを、
写真に撮って送ってほしいと言われた。


「……………、着たは着たのよ!」

『……なんでキレてるんですかいけませんねカルシウムを摂らなくては』
と興味本位で部屋を尋ねてきた
竜崎を待たせて試着中。




『…喋っていいですか』「なになになに」


あたしはあたしで一杯一杯で、
どうしたらいいのか本気でわからなくなっていた。

『…なんでそんなに嫌がるんですか、』

私に見せたくない理由を30文字でまとめてください、


カメラもって、
あなたがその部屋から
出てくるのを待ち続ける私の身になって下さい、

「なんで竜崎なのよ!あたしワタリさんに頼んだのに、」

『ワタリは別件で動いています』
私しか居ないんですよ、早く出てきて下さい





「だだだって背中とか腕とかけっこ出てるし」

『ドレスですから。』


「あたし、スタイルよくないのにライン出まくりだし」

『…私の記憶では大変整った身体でし「ああああああ言わなくていい、言わなくていいから」


『……いいかげんに天の岩戸ごっこはやめにして。』

こんなことに時間とられたら仕事できません


『出てきてください』

撮って、ご友人も待ってるはずです
送らねば



「……………わかったわよ、」








……す、







『……。』

「…………は、早く撮って」

『はい、ではこちらへ』











『…表情がカタいです』
パシャ、


「…無理!恥ずかしい」
『新婦の気持ちで微笑んで下さい』



「………無理」

『…あなたの、旦那さんになる人は、』

パシャ、

『きっとしあわせですね、』








たぶん、



世界一綺麗ですよ















(……良い表情が撮れました、)

(……、るさい)

(こんなふうに笑ってると、
なんだか自分の奥さんみたいですね、
幸せな顔を引き出しちゃいましたか私)

(………ばかじゃないの)

(……綺麗ですよ)



(………知らない)










どうですか、






私のお嫁さんにしてあげてもいいですよ?















(……
なんでちょっと上目線なのよ)



(嬉しいくせに)


(……蹴りたい)


(私そういった暴力的なプレイはちょっと)





(…よし、蹴ろう。)


























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