コルダお題
□優しさ溢れる午後
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2013.9.17
日曜日の午後は、天気が良いせいもあって、何処に行っても混雑していた。
用事を済ませて足早に駅前通りを歩いていると、ある雑貨屋の前で足を止めた。
先週日野と一緒に帰っている時、この雑貨屋は最近出来たばかりだと、そう言っていた気がする。ガラス越しに見える内装も可愛らしく、いかにも女性が好みそうな店だった。
(……明日の放課後は日野の練習に付き合う約束をしていたな)
この店に、何か彼女が気に入るような物があるだろうか。
ふと、そう考えて、小さく頭を横に振った。
(俺が日野にプレゼントをあげる必要なんてないだろう……)
大体、何をあげたら良いのかすら見当がつかない。
俺には縁のない店だ――そう思って歩きだそうとするけれど、なかなかその場から足が離れない。
(……彼女なら、どんな物をあげても喜んでくれる気がするが……)
――ありがとう、月森くん!――
そう言って、笑う彼女の姿が頭を過ぎる。
「………………」
きっと、店内は女性客で賑わっているだろう。
男一人で入るには、かなりの勇気が必要だ。
――それでも。
「……全く、らしくないな」
彼女の笑顔が見たい。ただ、それだけの理由で、この店に入ろうとしている。
そんな自分に、苦笑いと溜め息を零す。
俺はプレゼントをあげる口実を考えながら、雑貨屋の扉を恐る恐ると開けた。
*fin*
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