頂き物

□代償
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頭を撫でる手は俺の記憶にある姉さんの手よりもごつごつしていた。

長年竹刀を握っていた手はそう簡単に姉さんのような手にはなれない。

でも、俺の頭の下にある彼女の膝は姉さんのようだ。

そういえばきっとこの女は手を何とかする為に、自分を痛めつけたりするのだろう。

それは見たくないな・・・と俺はうっすら目を開けて俺をうっとり見つめる女の目を見つけた。

神谷薫。

白い着物に紫の肩かけ。

白梅香の香水をまとって、『姉さん』のように話し笑い動く。

彼女はよく俺に『あなたのお姉さんになれてる?』と聞く。

俺は彼女にはなれないと思う。


「縁?」

「なんだ?」

「気持ちいい?」

「・・・あぁ」

「お姉さんの手みたいで?」

「・・・そうだな。姉さんの手の様で。」


そう言えば満足気に笑う。

それしか言えない。

俺の中で神谷薫はどう考えても『神谷薫』のままだ。

姉さんの代わりでもなんでもない。

ただの神谷薫だ。

そう言ってやりたいのだが、それは神谷薫の生き方を否定することになるので言わない。

神谷薫をおかしくしてしまった俺の罪だから。


「暖かい」

「え?」

「ずっとこのままがいい。『姉さん』。撫でてくれる?」

「うん。うん。やってあげるわ!」

「ありがとう」







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