頂き物

□犬も喰わぬは
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賛辞ともとれる弥彦の言葉に気を良くし、昨日のあの忌まわしい光景には目をつむり此処は素直に剣心に歩み寄ろうと、道場を後にした。




「ごめん下さい!」



来客の声に、先程の決心が削がれてしまった。


そして玄関で見たものは…



「なっ!」



デジャブ…いや、昨日と同じ光景でも場所が全く違う。

此処は自分達の所謂愛の巣なのだ。

その愛の巣で恋人が別の女と抱き合うとは!正確には抱き着かれているのだが…




「やっかっ薫殿違っこれはっ


「何が違うって?昨日だってそうやって抱き合って接吻までしてたじゃない!」

「昨日っ!見てたでござるか?」


「もう剣心なんか知らない!」


いたたまれなくなり乱暴に草履を履いて家を飛び出そうとした。


その瞬間

「愛しの薫さーん!」
「「!!!」」

これはまた昨日のぶつかった男が薫に抱き着いて来た。

「えっあのっあなたはっ

「昨日貴女に一目惚れした片倉雅也といいます。あの後貴女の事調べさせて貰いました!昨日薫さんの方から僕の手を握ってくれて嬉しかったんですよ!」



「えっー!///私そんな事…」

思い出せない。


「薫殿の方こそ軽いでござるな!」


「なっなんですって!」

「驚いた。雅が一目惚れしたって人…剣心さんの家・主・さんだったのね!」

剣心に纏わり付く女が初めて薫の方を見た。

「家主じゃ「令姉さんを助けてくれた人が薫さん宅の居候なんだ!凄いなんか運命感じちゃうよ!」

薫の言葉をさえぎるように話す雅也という男は剣心より頭一つ分背が高くてすっきりした美形、昨日剣心が助けた令は恵を思わせるすらっとした大人の女の人。




「ねぇ剣心さん昨日助けて下さった御礼がしたいわ。」

そう言いながら剣心の胸元を指でなぞる。

「いや拙者礼など

ビシッと断りなさいよと思いつつも、出てくるのは素直じゃない言葉。

「どうぞ!何処にでも行ってらっしゃいよ!」



「…そうでござるか…わかった…」


冷ややかに言うと剣心は出て行ってしまった。

「あ!剣心さーん!」

その後ろ姿を女が追う。


私ではないあのひとが…






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