頂き物
□犬も喰わぬは
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「ふーっ。随分遅くなってしまったわ。」
昨日、世間でいう『恋人同士』になった。
出稽古に向かう今朝はなんだか剣心の顔がまともに見る事が出来なかった。
悪い事をしている訳じゃないのに後ろめたいような?ううんじゃなくて…何処か私…変わったかな?
稽古中も人の視線が気になって…弥彦が居たら叱られてたわね。
薫は今日の稽古の内容を反省しつつも、また一歩近付いた剣心との関係に心踊らせながら家路を急いだ。
「どんな顔して入ろうかしら////」
と前方をよく見ると女の人が酔っ払いに絡まれている。
元来困った人を放っておけない性の薫のとる行動は言わずもがな…だ。
疲れた体を奮い立たせて目標に向かって走った。
いや走ろうとした。
走るまでもなかったのだ。
「剣…心」
あっという間に事を片付けた恋人に帰宅の挨拶と賛辞を贈る為、再び走ろうとした。
「きゃっ」
後ろから走ってきた男にぶつかって、それも叶わなかった。
お互い謝罪の言葉を交わすと、薫は恋人の方へと意識を移したのだが…
「なっ!!」
なんと助けた女に抱き着かれ頬に接吻を浴びていたのだ。
先程の男はというと…まだ薫の側に居た。
目の前の光景に怒りに燃えた薫の手は、条件反射で何かを掴んでいた。(怒りの対象に物を投げるこれも元来の性)
掴んでいたのは…
男の手…
「嬉しい!僕も好きです!」
突然体を拘束された。
「☆%#※×÷!」
一瞬何が起こったのか解らなかった。
「やっ!」
全てを恋人に見られていたとも知らず…
ただ気が付けば恋人がいたはずの空間に風が舞っていた…
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