企画小説
□『離さないよ 繋いでたいの 僕は僕の手を』
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一方で、そのリクオは昼寝をしていた。
母親の布団で眠っていたが、ふっと目を開ける。
目を擦ってさっきまで、この部屋で一人レンジャーごっこをしていた片割れがいないことに首を傾げる。
「あら?おきたの?」
「おかあさん。おはよう。リクくんは?」
「リクはね、牛鬼さんが来たって聞いたから『遊んでくる』って飛び出したわよ。一緒に遊んできたら?」
「・・・ヤダ」
「どうして?いつもお菓子くれるじゃない。」
「ヤダ。僕、ここにいる。」
「でも、お母さん。お茶の用意でいなくなるわよ?」
「ヤダ。」
困ったわ。と若菜は苦笑する。
兄のリクがすごい社交的なのに対して、弟のリクオは引っ込みがちだった。
さらには極度の人見知りなので本家の妖怪とも一人で話すことはできない。
唯一話せるのが母の若菜と祖父のぬらりひょん。
片割れのリクぐらいなのだ。
布団を握って、ヤダっと小さく呟くリクオの目には涙が溜まっていた。
「じゃあ。リクオ。お母さんと一緒にお茶を入れに行こうか。」
「・・・恐いもん。」
「大丈夫よ。お母さんがいるじゃない。ね?」
「・・・うん。」
じゃ、行こうね。と若菜はリクオの手を握りお茶を入れに台所に向かった。
台所の中でもリクオは若菜の足にしがみ付いて離れなかった。
ちょっと小妖怪が近寄って来たら、泣き出す始末。
若菜は困ったわね〜と笑いながら大部屋に向かう。
「失礼します。お茶をお持ちしました。」
そう言えば、どうぞっとの声とリクの笑い声が聞こえた。
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