企画小説

□そしていつか読み返そう。昔々、ある処に・・・
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始まりは3月2日のことだった。

若菜はせっせと雛人形を飾りつけていた。

この家に女の子と呼べる子はいないが、それでも若菜の嫁入り道具であった雛人形は必ず飾られていた。

そんな人形を取り出しては妖怪らと並べていく若菜を見ながら鯉伴はふっと思った。


「若菜」

「はい?どうしたんですか?」

「雛人形をやろう」

「はい?」

「だから。雛人形をやろう。俺があのお内裏だ。で、若菜は姫さま。な?」


意味がわからない。

若菜は鯉伴をじっと見つめた。

鯉伴はそれでも『雛人形をやろう』としか言わなかった。


「あの・・・鯉伴さん?」

「そうと決まれば、配役だな」

「あの・・・「おい。全員集合させろ!ことは急するとでも伝えろ」

「・・・お話し聞いてくださいよ」


こうなってしまえば突っ走り続ける夫を見ながら若菜は苦笑した。

うきうきしている顔を見るのは嫌いじゃない。

話を聞いてくれなくなるのは難点だが、別にどうってことない。

若菜は止めていた手を動かし始めた。

かくして、奴良組総出の『ひな祭り』は開催されようとしていたのだ。


「若菜」

「はい?なんですか鯉伴さん」

「・・・なんでもねぇ」

「そうですか」


嬉しそうに部屋を出た夫にため息をついた。

さて、明日は大変なことになりそうだなっと直感がそう言っていた。







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