企画小説
□言えばいいのに
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家に帰れば、寝ていたはずの片割れは起きていた。
「リクオ」
「ただいま。」
「・・・」
まだ、苦手意識が残っているリクにリクオは声をかけるが、無視される。
変わりにこっちへこいと手招きされる。
それを無視することが出来ないまま、リクオは近寄った。
すると、ぎゅっと抱え込まれる。
最近、リクオが帰ってきたらよくこうするようになった。
「・・・・」
「あの・・・制服がしわになっちゃうんだけど。」
「どうせ、誰かに洗濯させるんだろ?かまわねぇじゃねぇか。」
「そうなんだけど。やっぱり気になるんだよ。」
「なら、脱げよ。脱がしてやろうか?」
ゆっくりと学ランのボタンを外されて、リクオは慌てて『気にしない』と叫んだ。
それにちょっと不満だったらしい、リクをリクオの首筋に顔を埋めた。
「おい。」
「ん?」
「この匂いなんだ?」
「匂い?汗の臭いとかじゃないの?」
「違う。男の臭いだ」
「男?・・・ん?・・・」
僕は男なんだけどな・・・
そう思ってから言われた意味をやっと理解した。
「たぶん、それは清継くんだと思うよ。」
肩に手を回されたし、と言えばさらに機嫌の悪くなる片割れ。
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