企画小説

□はじめまして、弐番目さん
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(我ながら呆れる)


来たくもないのにあの女に会いたくてその為だけに足を運んできた。

人の波に酔いながらも縁は神谷道場へと足を進めた。


その時だった。

とんっと軽く肩がぶつかったので何かと横を見た。


「あ。ごめんなさい」

「!!!」


会いたくって仕方なかった女がそこにいた。

姉のように清楚さはない。

道場帰りなのか汗臭い匂いがする。

腕には痣が出来ていて、年頃の女とは思えない。


「うぷっ」

「ちょっと、大丈夫ですか?」

「お前は・・・神谷・・・薫」

「休める所・・・・休める所・・・ちょっと歩きますよ。捕まってください。」


肩を抱かれて歩き出す。

縁はガンガン鳴っている頭を抑えて歩き出す。

思いだすのは、姉の最後。

あの男に抱かれて死んでいく姉の最後。


「神谷薫」

「え?」

「俺のために死ンでくれ」

「はぁ?え?何が・・・」


するりと二人は人ごみにまぎれていった。

縁は薫の手を引いて歩く。

目的地なんてものはない。

ただ歩く。


「あなたは誰なの?私の名前知ってるって事は雪代縁の関係者なの?」

「・・・・」

「私を使って剣心を呼ぶつもり?悪いけど私大人しく捕まってるようないい子じゃないの。」

「・・・・」

「ちょっと、何かいいなさいよ!!」

「・・・剣心を呼ぶ?それはナイな。俺はアレに会いたくない。大人しく捕まる?それは結構暴れてくれた方がこっちも助かるナ。」

「どういう意味?」

「俺は縁。雪代縁本人だ。はじめまして、神谷薫。姉さんの後釜」


ぎちりと掴んでいた腕にさらに力を込めた。

そして、そのまま骨を握る潰すかのように握る。


「いた・・・」

「・・・骨は強い方カ?」

「いや・・・・いやだ・・・」

「そうか、簡単には折れない・・・カ」

「いっ」


バキンッ


と、木の幹を折るかのような音が人ごみの中で響いた。







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