企画小説

□遊覧
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真夜中の京都は本当に闇だ。

一寸先さえも見えない。

月明かりにぼんやりとその輪郭を現すだけでしっかりとしたものは見えない。


「きゃ」

「大丈夫か?そんなもん履くからだろう。」

「だって。お気に入りなんですもの。初めての贈り物だったのですから。」

「だからって、それでつまずいて怪我されたら元も子もないだろうが。」

「では、しっかりと手を握ってください。」

「さっきからしてんだろ。」


しっかりと志々雄の腕にしがみつき夜道を歩いている。

由美の足元はいつもよりもすこし高めの下駄だった。

漆塗りで真っ赤な鼻緒が印象的だった。

十本刀を結成したときにに志々雄が由美に贈ったものだ。

生涯で一度だけの贈り物。

嬉しいのは分かるが今、こんな暗闇で履くことはないと思う。


「珍しいですわね。志々雄様。」

「今は『真実』って呼べよ。由美。」

「なりません。それは昔のことですわ。真実」

「フッ。」

「静かですわね。・・・世界が変わればこの静かさもなくなりますか?」

「いいや。」


真っ暗な闇の中で紅い眼が光った。










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