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□宝物
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 喜八郎は太股を擦り合わせ、悲痛な表情で首を振る。
 与えられる刺激に先走りは量を増すが、イケない。
 鏡越しに見える仙蔵は、加虐的な笑みを崩しはしない。

「先輩!やっ、もっとちゃんと……」
「ん?どうした?」
「こんなのじゃ……イケない……イケないんです!」
「おや……」

 仙蔵は真っ赤に染まった喜八郎の耳に、唇を寄せた。

「降参するのか?」

 そう言われると迷ってしまうが、喜八郎はもう我慢できそうにはなかった。
 直接、仙蔵に触って欲しいと思うあたり、まだまだ抱きたいよりは抱かれたいのだ。
 喜八郎はくるりと体を反転させると、着物の裾を割って持ち上げ、疼く下半身を晒した。

「こ……降参です」
「ふふ……それでいい」

 仙蔵は喜八郎の褌を取り外すと、強く握り込む。

「きゃ、あぁぁぁっ!」

 そして強く擦られると、喜八郎はあっさりとイった。
 仙蔵は膝から崩れ落ちた喜八郎を、再び組み敷く。
 視界に入った、閉められなかった戸から部屋に入る月光に、仙蔵は目を細める。
 喜八郎を酔わせるのは、自分だけでよい。そう、意志のない相手に馬鹿らしくも敵意を向ける。仙蔵は時々、自分が彼に寄せる独占欲の強さに呆れたが、愛しいのだ。愛しくてたまらない。誰にも渡したくはない。

「お前が酔うのは、私だけでよい。お前を可愛がるのは、私だ喜八郎」

 仙蔵は荒い息をする喜八郎に口付け、舌を絡ませた。
 喜八郎は返事を返すように、もっと深い口付けを求め、仙蔵の背に手を回す。



end

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