〔3.まるで恋のように〕絳攸

 あの夜に出会った姫は…

 寝ても覚めても頭の片隅に彼女がいた。唇の感触だってまだ残っている。

 「くそ…」

 なぜ、頭から離れてくれないのだろう。自分の中での優先順位は養い親の黎深様、それから百合さん。なのに…。

「絳攸、ちょっといいかな」

 夕刻、あらかたの仕事が終わった頃、楸瑛が吏部近くの廊下で絳攸を待ち構えていた。

「昨日は、結局説明できなかったから、これから説明がてら、「葉月」に会いに行かないか?」

なにやら花柄の巾着を見せながら、絳攸を誘う。

「なんだ、それは」
「お菓子だよ。こういうのに入れて渡してあげると女性は喜ぶしね」

やはり常春かっ。しかし、自分の気持ちの変化の原因を知りたくて、絳攸はついていくことにした。

「私の妹の十五番目の妹の葉月だ。葉月、こちらは李絳攸だ」

いい子にしていたかい? などと声をかけながらお菓子を渡した後、改めて楸瑛は絳攸を妹に紹介した。

「葉月とおよびください、絳攸様」
微笑んだ姿は、あの夜と少し違って憂いに帯びた姿はなく、可愛らしく微笑んでいた。
やはり、ドキドキするし、このまま彼女を見つめていたい。自分の手で笑顔にしたい。

でも、なぜか、女性や、恋など詳しくないのに、気が付いてしまった。彼女の楸瑛を見る眼差しに。

それは、まるで彼女に対する自分と同じなのではないだろうか→次回




お題提供:確かに恋だった
甘い恋10題(2)より


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