"ネプチューンっ"

声がする。
私を呼ぶ声が……。

…だれ…?

「…ネプチューン…。」

「ん…ウラヌス…?私…。」

どのくらい意識を飛ばしていたのだろう。
目を覚ませば優しく撫でてくれる貴方。

気持ちいい…。

そんな想いに浸っている暇はなかった。




***貴方の温もり




天王星。
風がざわめき,緑を揺らす星。
さざ波の音や,木々の揺れる音が好き。
…貴方の護るこの星が大好き。

貴方が…大好き。

だからかしら?
こんな事態だというのに足取りが軽いのは…。
きっと貴方に会えるから。
不安や恐怖…悲しさすら忘れさせてくれる。
私に力をくれる。
それが…貴方。

コンコン

「ウラヌス…?」

返事はない。

ガチャッ

「ウラヌス!?」

扉を開けても貴方はいなかった。
悪夢が頭を過ぎる。
忘れていた恐怖が頭に甦り,涙腺が緩む。

「嘘っ…!!」

慌てて部屋に入ろうとした瞬間,強い力で後ろへと引かれ,口を塞がれた。

「キャッ…」

「静かにっ!!…なんてな。…びっくりした?」

「ウ…ウラヌス…?」

「久しぶり。ネプチューン。君が僕の星に来るなんて珍しいね?」

後ろを振り向けば,してやったりな表情をしているウラヌス。自分は騙されたのだとようやく気づく。

「もう…騙したのね?」

「風に君の香りが混じっていたんだ。驚かせたくて…ついね。」

「馬鹿ッ…心配したじゃないッ…」

振り向いて抱きしめる。
するとウラヌスの腕が力強く私を抱き返す。

久しぶりの抱擁を噛み締める。
貴方の体温が伝わる。

ドクンドクン

と心音が聞こえる。
すると私の鼓動が伝わったのか互いに顔を見合わせる。
そして…どこからともなく口づけを交わす。

「「逢いたかったっ…」」

すべてが愛しい。
甘い一時。
永遠に感じるかのように永く,恋しい程に短い。

「ネプチューン…どうかしたのか?」

「え?」

現実に戻る。
自分が今日果たすべき使命を思い出す。
体温が冷めていくのが解る。

「なんでも…ないわ…?」

恐怖を理性で押さえ付け,不安を表情から消し去る。

「君がお忍びに来るなんて…何かあったのか?」

「あら?何かないと来てはいけないのかしら?」

そして…笑顔で感情を押し隠す。
それが私の嘘のつき方。

「いや…嬉しいなって思ってさ。」

なんて言いながらしっかりとベッドへと誘導される。
時間がないとは分かっていても,ついずっと愛されていたいと懇願している。

「優しくしてくださるのかしら?」

「保証は出来ないな。」

いつも通りのやりとり。
久しぶりだけど貴方は変わっていなくて。それが幸せな分,これからの事,今は見えないけど悪化している現状を思うと押し隠した感情が自然と表面へと出てくる。

彼にバレちゃダメ…

「ウラヌス…愛してるわ?」

全て話したい。
そうしたら,どんなに楽だろう。
このまま二人でいれたらどんなに幸せだろう。
しかし全ては打ち明ける事が出来ない。
それほど,貴方は大切な人。
誰よりも誰よりも大切。
私の命を…貴方になら全て賭けれる。
貴方だから。

涙を堪える。
彼に気づかれないように。

「急にどうしたんだよ…ネプチューン。」

貴方の温もりを感じる。
一秒でも長く覚えていられるように。

ベッドがギシギシと鳴る。
貴方が私に触れる度に頭が真っ白になる。
影は消える事なくついて回る。

それでも…私達は…一つになった。
何度も何度も頂点に達し…私は果てた。


****


"ネプチューンっ"

声がする。
私を呼ぶ声が……。

…だれ…?

「…ネプチューン…。」

「ん…ウラヌス…?私…。」

どのくらい意識を飛ばしていたのだろう。
目を覚ませば優しく撫でてくれる貴方。

気持ちいい…。

そんな想いに浸っている暇はなかった。

"ネプチューンっ!急いで下さい!急速なスピードで彼等の侵食が進んでいます!"

先程の声がする。
プルートだったのね…。
…急速に…?
どうして?敵はまだ力を増幅させてるの?
考えてる暇はないわ。…急がなきゃ。
でも…離れたくない。
…私…私はっ…

"ごめんなさい,今すぐ行くわ。"

「目が覚めた?」

優しい微笑みも暖かい手も,今はただ私を引き止めるだけ。

だから私は手を払いのけ,目を合わせない。
…いや合わせられない。
きっと…負けてしまうから。

「…時間が無いわ…。」

「ネプチューン…?どうした?教えて?」

困惑する貴方を無視して戦闘服へと身を包む。

全て打ち明けれたらどんなに楽だろう。
このまま一緒にいれたらどんなに幸せだろう。

それでも…私は…

「ごめんなさいっ…。ウラヌス…。」

多少の手加減をしつつも,確実に気を失わせるよう手刀を入れる。

「うっ…」

油断していたのだろう。
無理もない。
彼は何も知らないのだから。

「ネ…プ…チュ…ン…」

「ごめんなさい…ウラヌス…ッ。」

それでも…私は貴方を護りたい。

涙を流して走り去る。
振り返らずに。
次に会う時は,全て終わらせて…。
貴方の胸に。

目指す場所は一つ。
R-8…。
貴方の一番好きな場所。
私と貴方との思い出が深い場所。




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