short story

□キッカケ
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「ソレって…天王はるか…?」

エルザは女性にしては長身の身体を折り曲げ,"イチゴみるく"を取り出した。
白い棒を取って伸ばし銀色の膜を破って突き刺し,手渡してくれた。

「分からない…。だから…ッ!」

「会ってみたい…?」

私の持っているイチゴみるくを奪い,再び同じ動作を繰り返す。次は自分の口へ運ぶ。

「えぇ…。」

「じゃぁ,さっきの話ね?…賭けましょ?みちるはアタシが負ける方へ。アタシはアタシが勝つ方へ。みちるが勝ったら天王はるかを紹介する。アタシが勝ったら…そうね…イチゴみるくでも奢って貰おうかしら?」

おどけて笑ってみせる彼女。
手には髪の色そっくりの紙パック。
中身は既に無くなった様子。

「釣り合ってないじゃない。」

「何が?」

少し拗ねて見せてもエルザは素知らぬ顔。
仕方なく渡されたイチゴみるくを吸い上げる。甘い香りが口内に広がる。

「…美味しい…。」

「でしょう?」

勝ち誇ったような笑顔のエルザ。
眩しいようにさえ感じる。

「勝負もね…。やってみないと分かんないわよ?イチゴみるくが美味しいか飲んでみないと分からないようにね…?」

「…そうね。」

納得出来たような,出来ないような不思議な気分。私は残っているイチゴみるくをちゃぷちゃぷ言わせた。

「天王はるか…みちるは渡さないわ…?」

そう力強く呟いたエルザの言葉は私には届かなかった。

これは…私がエルザにあの人である天王はるかさんを紹介してもらう二ヶ月前の話。

この日私は,恋とチャンスの賭けをした。



end
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