short story

□貴女が知りたい
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「えぇ。タクシーで帰ろうかと思ってるの。」

いつもならこんな心配無いのにね
と少し困ったように笑う彼女。

「俺…送りましょうか?」

「え?そんな…悪いわよ。折角のオフの日でしょ?私の為に1日潰してしまうなんて…」

「大丈夫ですよ!タクシー代も浮くし,どうですか?」

彼女の言葉を途中で遮る。送って行けた方が俺には嬉しいから。

芸能人は歯が命とか言われてる自慢の白い歯を光らせて聞く。
内心凄く焦っている。
というより,怖い。
拒否されたら,どうしよう。
そんな俺の臆病な想いはすぐに消えた。

「じゃあ…お願いしようかしら?」

その返事を聞いて,
顔がが緩むのと同時に声が弾んだのが自分でも分かった。

俺ってポーカーフェイス出来ねぇのかなぁ…。

「俺,車回して来るんで待っててください!」

車に向かって勢いよく走り出す。
みちるさんの深海のような眼で見られると自分の気持ちを見透かされてるような気持ちになるから。それ以上は目を合わせていられなかった。

二人になれる…。
嬉しいけどよく考えると,複雑だな…。
気付いて貰えても,彼女には迷惑だろうから。
でも,今は…
みちるさん…貴女に夢中でいさせて下さい。

「さっ,行きますか!」

車を発進させ,彼女の元へと向かう。
車を降り,身支度を整えた貴女にそっと手を差し出す。

「お待たせしました!」

「ありがとう。エスコートお上手なのね?」

クスクス笑う貴女。
その笑顔の裏にはきっと俺ではなく,アイツを思い浮かべているのだろう。

「アイツよりですか?」
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