short story

□キッカケ
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…この風…懐かしい。

ふと私の頭の中に前世の記憶が流れた。
レオタードに身を包む長身の身体に私の手を引く温かな体温。
風になびく短髪でブロンドの綺麗な髪…。
貴女は…。



──────キッカケ



早朝の学校。
机で一人ペラペラと雑誌のページを捲る。
初めて見た時から気になるレーサーの世界。
お嬢様で育った私はそんな世界は知らなかった。

大袈裟とも言える見出しが目に止まった。

また…あの人だわ…。

『100年に一度の逸材!天才ジュニアレーサー天王はるか特集』

いつもなら気にも止めないだろう。
人に興味はなかった。
もちろんレースの世界にも。
だけど…彼女の事に妙に興味が湧いて,次から次に調べた。
そしてまた今日も…。

「どうしてかしら…?」

その呟きは気になる彼の事に対してなのか。

「貴女は…誰なの?もしかして…。」

「み〜ちる。何ソレ?」

「キャアッ///」

夢中になってて気が付かなかった。
親友であるエルザ・グレイが後ろから抱き締めてきたのだ。

「へぇ〜。みちるこんな奴タイプなの?」

「エ…エルザ///ち///違うわよ////」

「さっきからそのページしか見てない。」

「ウソ…見てたの!?」

見られた事への羞恥心が湧いて顔が赤くなるのが分かった。

「ふーん…図星なんだ…。」

クスクスと面白そうに笑ってからかうエルザ。

「え?もうエルザったら////」

エルザといると安心する。
いつも側にいてくれて,笑わせてくれる。
安心感をくれる。

いつからか分からないけど…ずっと一緒にいたのよね。
戦士としての運命を選んだ私…。
他人とは関わりを持たない私を唯一支えてくれる人…。

エルザがいるから…私はこんな世界を救うなんてくだらない事から逃げ出さないでいられるのかも知れないわ…?
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