short story

□貴女が知りたい
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「俺,車回して来るんで待っててください!」

車に向かって勢いよく走り出す。
みちるさんの深海のような眼で見られると自分の気持ちを見透かされてるような気持ちになるから。それ以上は目を合わせていられなかった。



──────貴女が知りたい



コンコン。

「どうぞ?」

返事を待って,楽屋を開ける。
エメラルドの美しい髪をなびかせた姫がこっちを見ている。

「みちるさん!全国公演終了お疲れ様です!今日の演奏も凄くよかったです!」

今日,俺はアイドルは休業で,
みちるさんの最終公演を見に来たんだ。
演奏を終えたみちるさんにとびっきり綺麗な花束を渡す。

「わざわざ来てくれてたのね?こんな素敵な花束まで…ありがとう。」

笑顔で受け取ってくれたみちるさん。
本当にこの人はバイオリンが好きなんだと思う。
何故かって??
公演を終えて疲れてるはずなのに,その笑顔からは,微塵の疲れも感じないから。
プロだってそんなの難しい。
疲れを知らずに出来るのは,疲れるのを忘れる位好きだからなんだと俺は思う。
それだけバイオリンに打ち込んでいる彼女を,
俺は心から尊敬している。

「いや,花束なんかよりみちるさんの方が素敵ですよ!」

「あら?お上手ねvどっかの誰かさんみたいよ?」

「誰かさん?あぁ…アイツですか?そういえば今日は見掛けませんね?」

自然と笑顔が引きつる。
俺はみちるさんが好きだから。

「えぇ。ほたるが急に熱を出してしまって…。せつなも今日は残業で遅くなるそうだから…。」

「そうなんですか…。それじゃあ帰りはお一人なんですか?」
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