short story

□jewel
1ページ/2ページ

君の温度が恋しくなって,
そっと指で唇をなぞる。

「…ん…」

君の声が漏れた。
ただ,それだけの事。
なのに,理性が飛びそうになる。



──────jewel



ベッドの上,僕の隣で,スースーと可愛らしい寝息を立てて眠る君。

透き通った白い肌。
スラリと伸びる肢体。
長い睫毛。
桜色の潤った唇。
深海を連想させるしなやかな髪。
そして,
僕を誘惑するような甘美な声。

君のすべてが欲しくて。
君を僕の色に染めたくて。
夢中に君を求めた。

さっきは,あんなに上がっていた体温も,今ではこんなに冷めてしまった。
身体に寒気を感じ,
近くに放り投げていたワイシャツを羽織る。
ふと,君の乱れた姿を思い出す。
温かくて,
綺麗で,
魅惑的で,
あまりにも神秘的だった君の姿。

君の温度が恋しくなって,
そっと指で唇をなぞる。

「…ん…」

君の声が漏れた。
ただ,それだけの事。
なのに,理性が飛びそうになる。

「みちる…。」

返事が返ってくるはずもないのに,
分かりきってることなのに,
ほんの少し,期待してしまった。
馬鹿だなと思い,自嘲する。

「ん…はるか…」

不意に名前を呼ばれて,吃驚すると同時に心が踊った。

「…寝言…か。どんな夢見てるの…?」

君の寝言に心が満たされ,君への愛しさが次々と溢れてくる。
君の横に身を投じ,壊れないようにそっと抱き寄せる。
僕の大切な宝物。
愛しい君。

「何があっても必ず護るよ…みちる…。」

手を絡めて誓う。
誰も聞いてはいないこの誓い。
ただ,照らす月に,月の光に誓った。

温かな体温に安心感を覚え,自然に目を閉じる事ができた。

夢の中で君に会えますように。

そう願いながら,意識を手放した。




END


→後書き
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ