捧げもの

□砂糖菓子のような間柄
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ザックスとクラウドが喧嘩した。


 ―砂糖菓子のような間柄―


その噂はまたたくうちに基地内に広まった。
何しろこの基地一の馬鹿っぷるの彼らが喧嘩したのだ。日ごろから噂好きの人々が見逃すはずはない。
いつも一緒にいた彼らがなぜか別々に行動するようになってさらにその噂は信憑性を持ち、広がる速度を増した。
だが、なぜどうして喧嘩したのかはわからなかった。
性格の不一致?浮気?日ごろの鬱憤?体の相性?それとも冷蔵庫のプリンを食べられた?
人々は様々に噂をするが、その真実は一向にわからない。
なぜなら一緒にいないから。たとえ一緒にいたとしても会話のひとつもない。
目の前でののしりあいでもしてくれればこのうわさもすっきりするのに。
理由がわからないからこそ、誰もがこの噂に夢中になった。


くしくも2人は同じ部署だった。
上司が物分りのいい者だったので席も隣り合っていた。
しかし今は喧嘩中。ずっとだんまりだ。
前は本当に小さな仕事でもすぐにべたべたしながら片付けていたのに、今は皆無だ。
助け合うことも無く、他人の力が必要なときは他の人のもとへと助けを求めにいった。
そんな2人の様子を上司であるセフィロスはじっと見ていた。
そして机の上にある書類をぺらぺらとめくりだした。
「ふむ、荒治療とやらが必要かな?」
少しばかり無表情なその顔に悪巧みの笑みを浮かばせた。

ザックスとクラウドが喧嘩をしてから3日が経った。
2人はセフィロスに呼び出され、執務室へとばらばらに向かった。
「なんの用ですか?」
「仕事だ。詳しくはそこにある書類を読め」
「おっさん、俺ちょっとパスしていいか?」
野生の勘を働かしたのかザックスはさっそく逃げようとした。
「駄目だ。このまま喧嘩したままなら部隊を分けなければならないのでな、それは面倒なんだ。だからこの作戦で仲直りしてこい」
「・・・そういうのは普通黙って画策するもんじゃないか?」
「勘と仲だけはいいお前らのことだ。もう呼ばれた時点でそのことは気が付いていただろう。だったら先に行っておいた方が楽だろう」
どこか人と違う感覚を持っているセフィロスを上司に持つと部下は苦労が多くなる。しかし部下も変わり者ぞろいなのでどっちもどっちだ。
そして結局2人はおとなしくこの仕事を受けたのであった。
所詮は雇われの身。サラリーマンも大変だ。
こうして彼らはなぜかミッドガルズの地下へと向かった。

仕事の内容は「最近地下からうなり声みたいなのが聞こえる。モンスターが野生化しているかも知れないので、調査及び退治を2人でやってくること」だった。
所詮噂話の領域を出ないので、あまり大大敵にやると余計な混乱を招く恐れがあるので2人に白羽の矢が立ったのだった。
まあ、本当ならセフィロスにまかされた仕事だったのだが、汚れたくないのと面倒くさいのと悪戯心とあとはほんのわずかなお節介のため、ザックス達に仕事が回ってきたのだった。
そんなこんなで今2人は下水管の中を歩いているのだった。
「次はそこを右だ」
クラウドの腕に抱きかかえられたぬいぐるみのようなネコ型のロボット(青くはない)がセフィロスの声でナビゲートする。
「なあ、おっさん」
ザックスが先を歩きながら振り返らずに訊ねた。
「ん?なんだ。そのまましばらくまっすぐだ」
「そのロボットは趣味か?」
「いや、これは違う部署からスパイ用のロボを借りてきたのだ」
「神羅も暇なことするな。ってか金の無駄じゃねえか?」
「そんなことはないぞ。かわいいと大体の者が油断してスパイがしやすいだろう。あとぬいぐるみ形体だといざとなったらぬいぐるみの振りができるしな。他にも着ぐるみ効果で不思議と中の人間のことを意識しなくなるらしいぞ。これはちゃんと心理学とか考えて作られたものらしい」
「珍しく饒舌だな」
「あ、ちょっと行きすぎだ。先ほど通り過ぎた曲がり角を右だ」
「おいおい、ちゃんと道案内してくれよ」
ザックスは頭を掻きながら元来た道を戻ろうと振り返った。
そこには瞳に強い光を宿したかわいい恋人がこれまたかわいい猫のぬいぐるみを抱いて立っていた。
「ほら、戻るぞ」
クラウドはザックスをにらみつけた後、まるで怒ったようにしてそっぽを向くと歩き出した。
「まだあのこと怒ってんのか・・・・まあ俺もだけどな」
ザックスもクラウドの後を追って歩き出した。
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