捧げもの

□welcome京極ランド
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「welcom to 京極ランド」

看板にはそう上手なのか下手なのかわからない文字で書かれていた。
又市は看板をじっと見つめる。
「又市さん、チケット買ってきましたよ」
そんな又市のもとへちょっとおめかしをした百介が走りよってきた。
そうなぜか又市は百介とともにこの京極ランドへときているのだった。
「ちゃんとワンディイフリーパスですから、一日中遊べますよ。早く入りましょう」
百介は又市の手を引くと遊園地の中へと進んでいくのだった。
確かに暇だといったのも、面白いところがあるから行こうという誘いに乗ったのも又市自身だったが、何か違う・・・
入る前から又市は後悔していた。



百介はパンフレット片手にどんどんと進んでゆく。途中にあるジェットコースターやら海賊船などの遊園地の目玉、絶叫系には目もくれない。
やがて大分奥の方まで進んでからようやく足を止めた。
目の前にはおどろおどろしい装飾の古びた日本家屋があった。
看板には「お化け屋敷」とだけ書かれていた。
一瞬で又市は理解した。百介がわざわざ遊園地に来た理由が。
「又市さん、はやく入りましょう」
しかしわかったところで百介の輝かしい笑顔に逆らえるはずもなく、又市は吐きかけたため息を飲み込むと一緒に入っていった。

一時間後
はしゃぎまくる百介を引きずり又市はお化け屋敷を後にした。
中の騒ぎは・・・まあ大変だったとだけ言おう。
「ほら先生、次ぎ行きやすよ」
「はう〜ん、天井なめ、倉ぼっこ、小豆洗い、ぬらりひょん・・・」
「次はもっと遊園地らしいところにしやしょう」
百介はまだ名残惜しそうに後ろを振り返りつつ、又市の後を追うのであった。
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