捧げもの

□Blue summer day
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夏真っ盛りの日本列島。
夏の日差しが日々勢いを増し、向日葵は高く伸びる。しかしではそんなことは外のこととばかりに、ガンマ団本部の全ての窓は締め切られ、クーラーが25℃の風を吐き出している。(ややクールビズ)
夏の太陽はブラインドでさえぎり、蝉の声すらも中には届かない。カリカリと何かを書き綴る音と紙をめくる音だけが部屋の中に響く。
最上階にある第2執務室の中で仕事をしているのは、ガンマ団総帥側近のティラミスとチョコレートロマンスの2人だけだ。
自主的に夏休みに入ってしまった団員の仕事を片付けているのだった。ここ数日2人は割り振られた部屋に戻ることなく、執務室となりの仮眠室で寝泊りしていた。

トランス状態で黙々と仕事を進めていると、突然部屋の扉が開いた。
ティラミスとチョコレートロマンスは干満とした動きでそちらを見る。
「アローハー!やあ、今日もまじめに働いているかい?」
赤のアロハシャツと黄色の麦藁帽子、首には花輪をかけたバカンス姿のマジックがそこにはいた。
ティラミスは机の上からカレンダー付きの時計を発掘して見た。
「おかえりなさい。予定より早いお帰りですね」
マジックは手に持った紙袋を1つずつと、花輪をティラミスに帽子をチョコレートロマンスにわたした。
「お・み・や・げV」
「「どうもありがとうございます」」
「まったくブラインドも締め切って、不健康的だぞ君たち」
マジックは窓際まで歩いていくと、一気にブラインドを開け放った。
太陽はもうすでに高い位置にいて、覚悟していたよりも強い光はなかった。この部屋の壁は一面窓となっており、そこから青一色に染まった空が見える。
久しぶりに見た青空はなぜか眠気をさそった。
「実はこんなに早く帰るつもりはなかったんだけどね。カジノで偶然にもハーレムに会ったんだ」
ハーレムという言葉が出たとたん、ティラミスの動きが止まった。
「それで訊けばちょうどここに帰る途中だって言うから、飛行船に乗せてもらったんだよ。ハーレムももうすぐ沢山の土産物抱えてここへ来ると思うよ」
「うわぁぁああぁあ!!」
マジックの言葉が終わるか否かの内にティラミスは叫び駆け出すと、窓を開けて外へと飛び出していった。
「ちょっと ティラミス ここ 30階」
思わず片言になったマジックとチョコレートロマンスが窓から下を覗くと、ティラミスはレンジャー部隊顔負けの動きで降りているところだった。
彼はあっという間に地上に降りると、わき目も振らずにどこかへ走り去っていった。

「ちーす。愛しのティラミスちゃんはいるかい?」
後ろから声が掛けられてマジックが振り返ると、そこには手にあふれんばかりの荷物を抱えたハーレムがいた。
「部下に荷下ろし任せて直行してきたぜ。ところでティラは?」
「先ほどこの窓から逃走しました」
チョコレートロマンスはまだ下を見たまま言った。
「そうか、ありがとよ。土産はここにおいていくぜ」
そういうとハーレムは窓から飛び出し、ティラミスの後を追っていった。

残ったマジックとチョコレートロマンスは顔を見合わせる。
「ハ・・・ハワイは楽しかったですか?」
「ああ、とってもよかったよ。マカデミア・ナッツは最高だね」
「それはよかったですね。今度ハワイ支部から箱で送らせましょう」
「それじゃあ、仕事にでもいくかな」
「がんばってくださいね」
「チョコレートロマンスもがんばりたまえ」
感情をこめずに会話すると、マジックは部屋から出て行った。

とりあえずチョコレートロマンスは大量の土産物の中から食料品を探り出すと、仮眠室の冷蔵庫に入れた。
だれた気分のまま執務室に戻り、机に向かうが何もする気にならない。
自然と机の上におかれたままだった麦藁帽子を弄ぶ。
黄色の帽子はまるで太陽のように夏のにおいがした。
チョコレートロマンスは帽子を右手に持つと、椅子から立ち上がり窓際まで歩いていった。
途中でクーラーを止める。
ティラミスのあけた窓からクーラーの風よりも涼しい風が吹く。
チョコレートロマンスは残りの窓も全て開けた。
この部屋がかなり高いところにあるから、窓からは一面の青しか見えない。
チョコレートロマンスは伸びをひとつすると、床に寝転がった。
毛の短いじゅうたんが背中に気持ちいい。
目を閉じても空の青が見える気がした。
(そういえば、ロッドも帰ってきたのかな?)
そんなことを考えているうちに、いつしかチョコレートロマンスは寝入ってしまった。
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