薄桜鬼 弐

□49. 苦しみを厭わず
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つまり土方を始めとした四人からは影を奪い、本当の戦闘にさせた。


しかし、沖田と斎藤の影は奪わず……しかし奪ったと見せかけるようにして幻覚を見せているというのか。


だが、幻覚が相手だというならば、実体を持たないはず。
脳に働きかける妖術が、本当に斬り合いに縺れ込んでいるのはどうしてか……。


つい七緒の答えを待ってしまったが、そこで妖の姫君は嘲笑し、言葉を留めた。
嘲笑った相手は、まるで七緒が七緒自身を馬鹿にしているようだった。



「続きは頭を使いなさい」


「…っ」


「…」


「春霞、アンタならこれだけ言えばわかるでしょ」


「……」





「影法師は、式神も使えるわよ」





目を、見開いた。
そうか……そういうことか。
藍人を殺した方法が、ようやく理解出来た。



「そういう、ことですか」



傀儡でもない。


本人でもない。


本人の影を実体化させたわけでもない。


式神は生きている人間と同じ姿に化けられない。


ならば、どうしたというのか。


式神を生み出し、自分たちに影の幻覚を映し出したのだ。


藍人が沖田と戦っているように幻覚を仕掛け、藍人が妖術を使って抗えないように彼の力を禁忌の術で封じ込めた。


今、羅刹化した沖田や、斎藤が自分たちの目の前に対峙しているのも同じこと。


まったく同じ方法だ。



「烏丸、力を貸して下さい」


「え?」


「要は、だまくらかし合いということです」



―――ならば、これで終わらせる。


そう決め込んだような表情を見せる茜凪に、烏丸は何かを察した。


そしてただ一言、問う。



「―――……出来るのか」


「出来る出来ないの問題じゃありません」



白が赤に染まった着物、一度力を解いて翡翠に戻ってしまった瞳。


もう一度、というように茜凪は顔をあげる。


―――茜色に染まった眼は、強さを魅せた。





「やります」





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