短編小説【他校専用】

□(好き、)なんていえたら苦労はしない。
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「はぁ〜…。」

「何溜息ついとねん。景気悪いんか?」

「あたしは商売人か!?」


放課後の教室。

あたしたち三年生の夏も終わり、部活も終わった。

何も無ければ帰りやと担任は言うけど、何でか家に帰りたぁなかったから、教室に居った。

そんで…。

なんでか知らんけど同じクラスの謙也も居った。

何もすることなくただボーっとった。

ただ…それだけ。

謙也は謙也で筆箱から消しゴムを取り出して投げて遊んでた。


「………。」


ジトーっとした目で見とったら謙也の動きが止まった。


「な…なんやねん…?」

「…びんぼーくさっ。」

「う…!!うるさいわ!!」


シュバッ!!と消しゴムをあたしに投げつける。

でも簡単に避けたから当たらん。


「…そういや、何でお前は帰らんの?」

「…なんとなく。」

「さよか…。」


外を見ると空が真っ赤に染まっていた。

教室も真っ赤に染まっていく。

謙屋の顔も夕日の所為で真っ赤や。

窓から秋独特の冷たい乾いた風が入ってくる。


「なぁ…。」


そう、呟きかけた。

やけど、止めた。

見つめあったまま、沈黙の時間が止まる。


「…なんや?はよ、いいや??」

「…やっぱ、言わへん。」

「?なんやねん…。」


あたしはぷいとそっぽを向き廊下を見た。








(好き…、)








そういえたら誰も苦労はしない。







私の心に秋独特の冷たい乾いた風が吹いてゆく。





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