短編夢小説【立海専用】
□記憶の針
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小学校の頃…
ペアを組んでいた貞治とジュニア大会で初優勝をした。
俺たちは秘密の場所で同時に『おめでとう。』といって笑いあった。
そうして俺たちは大会で優勝を総なめにした。東京のほうでは結構有名なダブルスペアになった。
2人で一緒にトレーニングしたり、姉さんがつくったクッキーの味の本音を言って怒られたり、山登りをして帰れなくなって2人とも大目玉食らったり、宿題を教えあったり、初詣へ言ったりした。
…しかし、別れというのは突然で父親の都合で神奈川へ行くことになった。
「蓮二―――!行くよ――――!!」
「待って!姉さん!!…貞治。また今度、どこかでな。」
「れ、んじ…?」
俺は辛かったから居場所も何も言わずに貞治に別れを告げた。
今思えば俺はあの時、別れの言葉よりもただ未来をまっすぐに描くことしか出来なかったんだ。
俺はテニスをするために立海に入ることにした。
風の便りで貞治は青学に入ったと聞いた。
運命というものは時に残酷で寸分の狂いもなく、俺たちをめぐり合わせた。
あの日の試合へ…
勝率は五分五分だった。
あの試合の瞬間、本当に一時だけだったが昔に戻れた。
「俺は過去を凌駕する…。」
心と心でぶつかり合えた試合だった。
「いくぞ、貞治!覚悟!」
結果は6−7で敗けた。
しかし、心残りは無い。
だが、俺たちの夏が終わったわけではない。
また戦うこともあるかもしれない。
俺たちは帰り際にすれ違った。
何も言わないまま…。
「「再開の約束はまだいらいないだろう…?」」
俺たちは小さな声でそう呟いた。
いつかまた試合でめぐり合えると確信しているから。
練習をしている時にふと思った。
あの日埋めたタイムカプセルはまだ残っているのかと。
俺は姉さんに頼み、車を出してもらった。
小さいころ、貞治と一緒に埋めた宝箱…。
勝手に掘り返すのもなんだが気になって仕方がなかった。
川沿いの土手に大きな一本の木がありその根元に宝箱を埋めた。
案の定、その木はまだあり、家からもってきたスコップを車から出した。
近寄ってみると人影が見えた。
なにやら根元を掘り返してみる。
「あ。」
「あ。」
貞治だった。
「…久しぶりだな。どうしてココへ?」
「それが気になってな。」
俺たちはフと笑った。
「考えるのは一緒か。」
「そうだな。」
何年間二人の間に蟠りがあったのだろう?
俺たちを笑顔にしてくれたのは一つの宝箱だった。
「お。あったぞ。」
「開けてみろ。」
小さな錆びた缶の中に一枚の紙と一枚の写真。
「懐かしいな。」
「そうだな…。」
一枚の紙と一枚の写真は輝いて見えた。
「関東大会では負けたが全国では勝つぞ。」
「フ…残念だが、優勝は青学が貰うぞ。」
俺たちの過ごしてきた日々は大人になっても大きな宝物になるだろう。
俺たちの胸に記憶の針となって刻まれて…