小説

□collaboration
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今は秋とは言っても、まだ夏の余韻が残っていることを改めて実感する。つまり、寒くはなく天候によっては暑かったりも寒かったりもする…というところだろうか。

「キョン…ちょっと、あんた聞いてんの?」
無遠慮にハルヒがバシバシと俺を叩いている。
聞いてるよ。つーか痛いから叩くな。
「やるわよ、二人三脚。…ほら、練習するから左足出しなさい!」俺に綱を突き付けるようにして言った。
「…はいはい。」
言われた通りに足を出す。
そこにハルヒは手際よく、自分の右足と俺の左足を結び付けた。

──ハルヒが俺と二人三脚をするようになった理由を誰か教えてくれ。今でもわからん。
ただ、体育祭の競技決めの時にハルヒが俺を掴んで威勢よく「男女混合二人三脚やるわ!!」と宣言したことによってこうなってしまったんだからな。「体育祭?そんなもんつまんないわ!」と言われて厄介な事になるよりは遥かにマシだが。
…何を考えているんだ、まったく…。

ハルヒが俺の肩に腕を置いてきたので、俺も腕を置く。
「せーのっ!」 ハルヒがいきなり進みだそうとした。
何の打合せもなしにそんなことをしたから、俺もハルヒも二人とも転んでしまった。
「もー、何してんのよ!あたしまで転んじゃったじゃない!」
うるさいな、いきなりハルヒが打合せなしに行こうとしたからだろ。
「…じゃあ、右足からでいいわよね。ほら、まだまだ行くわよ!」今度は二人共転ばないように気をつけながら立ち上がり、再び腕を置いた。

「今度は大丈夫でしょうね?」
多分な。
「そう、わかったわ。…せーのっ!」
─タッタッタッ─と、足音と隣のハルヒの息遣いがよく聞こえる。
しばらくこうしと走っているとだんだん慣れてスピードが上がり始めていた。

トラック半周を走り終えると、「意外と良かったじゃない、キョンにしてはやるわね。」
「あぁ、まぁな。」
とても満足そうな満面の笑みで俺に話し掛けてきたハルヒは、とても久しぶりに見る気がした。

そのあと、4・5周程トラックを走り、練習は終わった。最初で最後の練習なんていいのか?
さすがにそんな距離を走ったもんだから疲れてしまった。

ゆっくりと制服に着替えて下校し、住宅街に入ったところでハルヒが後ろから声を掛けてきた。
「キョンっ。」
ん、ハルヒか。何だ?
「今日の練習で疲れて足痛くって。──だから、おんぶしてくれない?」いきなり声かけてそれか。
お前なぁ、俺だって疲れてるんだぞ。何で同じ距離走ってる俺がお前にそんなことしなくちゃならないんだ。
「だから、疲れたからって言ってるでしょ?…さっさとおんぶしなさいよっ!」
…まったく、分かったよ。ほら、カバン持て。
ハルヒにカバンを持たせ、しゃがんで乗りやすいようにする。
「んしょっ。」

ハルヒの腕が俺の首元に来て頭を置くと、体重(あまり重くない)が俺にかかってきた。
「──これでいいか?」
初めてこんなことをした。まさかハルヒにこんなことするとは思わなかったぞ…。
「ん、いいわ。…キョンって意外と背中広いのね。」
そうか?別にそうとは思わないけどな。
ハルヒの心音が背中から伝わってくる。すごく早くなってるが、それはきっと俺も同じだろう。

それからは俺も予想外の出来事に緊張してしまったため特に会話はなく、いつの間にかハルヒの家に着いた。
ほら、着いたぞ。
「…うん。」
玄関の前に下ろして、ハルヒにあずけておいたカバンを受けとった。
じゃあ、俺も帰るな。
「ありがと。じゃあ…また明日ね。」
「じゃあな。」
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