戦国BASARA

□ばれんたいん。
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『愛ノ詰マッタコレサエアレバ〜、気ニナルアノ子モ即ゲッチュー!日ノ本デハナカナカ手ニ入ラナイ貴重ナ代物。
決戦ハ来月、早メノ準備オ勧メスルヨ。
今ナラ特別ニ一ツ二千五百両デオ譲リシチャウネ〜』




政宗の元にそんな触れ書きが届いたのは寒さ続く睦月。
…胡散臭さ大全開のそれは恐らくもなにも、あのどこぞの怪しい教祖様だろう。
来月、何かあったか?と考えれば思い当った事が一つ。


「Ah〜,"Valentines Day"か」


さて、月日は流れて二月十四日。
あの触れ書きが届いた後、政宗は二千五百両でチョコレートを買った。如何に怪しい相手からだと分かっていても迷わず買った。もちろん幸村にあげる為。
“想いを寄せる相手に渡す(主に女性から男性に)”というバレンタイン習わしに習ってのこともあるが、ただ、あの甘味大好き人間にあげたいという気持ちもある。きっと、にっこにっこしながら幸せそうに頬張るに違いない。
そう思ったら、ただ取り寄せた物を渡すのが味気なく、色々と手を加えて完成させた手の中のこの甘味。

丁度良く三日前、忍びにぶら下がり空から現れ現在滞在中の幸村に渡すべく、先程から城内をうろうろするも当の本人が一向に見つからない。


「稽古場にも居ねえか…何処に行きやがったアイツ」


己に何も言わず帰るなんて有り得ない……まさか何者かに浚われたか?嫌な考えに傾きかけたその時、


「政宗殿〜!!」


こちらの気など知らない元気な声が後ろから聞こえた。振り返れば今の今まで探していた幸村と、その隣に己が右目の従者。


「??そんな難しいお顔をされて如何なさった?政宗殿」

「てっめ…人の気も知らねえで……何処に居たんだよ、探したじゃねえか」


聞けば小十郎を連れだって城下まで行って来たという。じろり、従者を睨むと申し訳御座いません、どうしてもと真田にせがまれましてと苦笑いされた。


「んだよ、城下行くなら俺がいくらでも案内してやるのによ」


そう言うと幸村は小十郎を見上げた。小十郎もそんな幸村に対してわしゃ、と頭を撫でる。
それを傍から見ている政宗の気分は急降下だ。自分に内緒で二人で城下に出掛け、こんな仲睦まじい姿を見せられては。
そんな主人から不穏な空気が流れてきている事に気付いた小十郎。主がこの青年に対し色んな意味での好意を持つ事を知っている為、幸村の頭を撫でるのを止めてこほんと咳払いを一つ。


「………それでは、私は仕事に戻ります故これで。……真田」

「はい」

「テメエが心配する事はねえ……大丈夫だ」


そう言ってその場を去る小十郎の背に向かい、幸村はありがとうございましたと叫んでぺこり頭を下げた。


「……………………で?」

「ふおっ!?!?」


頭を上げるといつの間にやら目の前に来ていた政宗に驚いた。更にずい、と近寄ってくるのでたじろいでしまう。しかも何やら不機嫌気味。


「城下に何しに行ったんだっての。アイツと二人で」

「ま、政宗殿?某何やら仕出かしたで御座ろうか?……怒っておいでで…いらっしゃる?」

「別に怒っちゃいねえ。聞いてんのはこっちだ。答えろ」

「……ええと、それは…あの、」


もごもご口ごもる幸村にますます機嫌が悪くなる。
ちっ、小さく舌打ちして踵を返した。これ以上こうしていてもイライラが募るばかりだ。


「分かった。……言いたくねえンならもう聞かねえよ」

「あ、」


すたすたとその場を離れようとすると、ぉ、お待ち下され政宗殿!!腕をぐいと引かれてそれを遮られた。


「……An?」

「政宗殿っ!!こっ、これを!!!」


ずい、と目の前に小さな木箱が差し出された。そういえば会った時から何やら両手でずっと大事そうに持っていたような気がする。


「っどうしたら良いのか分からず日頃からお世話になっている政宗殿にと某…っしかしながら政宗殿の好みなぞ全く存じ上げぬ故どうしてもと片倉殿にお頼み申し上げて某が選んだ物なら気に入って頂けると助言頂き……っ」

「……おい?」

「お渡しするまで内密にと思いましたが、情けのう事に今だかつてこのような政宗殿の様にはいかない訳で……っそういった調度品の良さ等に一切疎い故お気に召して頂けるか定かではございませぬがっ!尚且つ慣れていない某をお許し下され!!」

「Wait!?待てまて!ちょっと落ち着け幸村!!言ってる事がさっっっぱり分からねえ!?」


云々かんぬん…突然始まったそれにおののく。
おそらく色々端折られているのだろう、何を言わんとしているのか全く分からない(多分幸村本人も何を言っているのか分かっていない)。
分からないが、息継ぎも儘ならなず一気に捲し立て、今にも泣き出しそうな勢いで必死な顔して言葉を繋ぐ幸村にぎょっとして、苛立っている事も頭からすぽんと何処ぞへすっ飛んだのだった。
 
 
 
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