戦国BASARA
□ばれんたいん。
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月の明かりに照らされて、闇夜に白銀が浮かび上がる。
障子を開き、部屋から眺めるそれであるが、いつも見慣れている筈なのに隣に幸村が居るとそれだけで違う景色に見えるから不思議だ。そんな景色を、己が為に選んでくれたこの“猪口”を使って飲む酒はまた格別というもの―――――。
―――――……あぁ、しまった。俺としたことが。
昼間の騒ぎで迂闊にも忘れるところだった。
「おい。幸村」
「何でござろう?」
人一人分離れて座る幸村にちょいちょい、人差し指でもうちょいこっちに来いと合図する。頭にいくつも疑問符を浮かべながらも素直によいしょ、と傍に寄ってきた。
「Hey,口開けな」
「??ぁ、…あーーー…?………ふぁほごっ!?!?」
やっぱり素直に口を開ける幸村に、お前もうちょい警戒しろよ…とか思わなくもなかったが、まあこの際どうでもいい。
あーんと開けられた口にそれを放り込む。
「………っ!?……っ、っ?……、…!!」
もごもご…もく、もく。
咀嚼する間もきらきらした目をこちらに向けてくる。その様子からしてやはりお気に召したようだ。食うか?もう一つ目の前でちらつかせれば、こくこくこくと力強く首が縦に振られたので、もう一つ放り込んでやった。
「………因みに、お前が今食っているのが“チョコ”って甘味だ」
「ふぉご?」
「“Valentines Day”っつって、南蛮じゃ今日それを渡す風習なんだよ」
「……………っ!?!?」
もぐむぐ、ごくん。飲み込んだ幸村が思い切り叫ぶ。
「何と!?もしや某“ちょこ”違いを!?!?」
「それに、チョコはあっちじゃ女が惚れてる奴に渡すもんだ」
「なんとおぉおーーーーっっ!?!?」
……まあ、世話になってる奴にってのも間違っちゃいねえが……と言う言葉は最早耳には届いていないようだ。顔を真っ赤にしながら愕然としている。
「なな、な、何と言う勘違いを某は……っっ」
「アンタは人づてに聞いたんだろ?どこでそうなったか知らねえが、それは仕方ねえだろ。俺はアンタからコイツを貰えて嬉しかったぜ。良いじゃねえかそれで」
青いそれを使い一口酒を飲む。それでも何か言いたそうだったので、とりあえずチョコを口に押し込んでやった。
丸め込まれた様な形になって、少々納得がいかない様子だったが、美味ぇだろ?そう問いかければこくり頷く。
「アンタ甘いモン好きだからな、作り甲斐がある」
「………これは政宗殿がお作りになったので?」
「チョコレートはあの胡散臭い教祖サマから取り寄せた。んで、ただそのままやるのもつまらねえから、ちぃとばかし手加えただけだ。……これは“トリュフチョコ”ってんだ」
ほら、まだあるから食いな。
次々と口に運ぶ様は、さながら動物の餌付けの様。
………武田のオカン…もとい、忍びに怒られそうだと思いつつも、止めないのは幸せそうな顔して食べるから。
斯様に美味しゅう物をありがとうございまする。暫らくほわほわした笑顔で頬張っていたが、ふと不思議そうに首を傾げた。
「どうしたよ幸村」
「むぐ……まさむねどの、お尋ねしたい事がございますれば」
「何だ?」
「何故ゆえ、某に“ちょこ”を?」
「………………んなモン、決まってんだろうが」
―――――………アンタに惚れてるからだよ。
今度は甘いそれを自分の口に放り込み、そのまま親鳥が雛に餌を与える様に食わせてやった。
end
突っ込み所満載です。
好き勝手書いてたら好き勝手書いてたなりに、やはり纏まりが何処かに旅立ちましたました。←
でも、今回は多分比較的に伊達さん良い思いしてると思い…ま、す(当社比)。
最後にちゅー(?)できたしね。一応。