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□傀儡女 ー断章ー
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「良い子にしてた?」


濁った音を立てて錠前が外され、ギギ、と重い扉が開いた。
石牢の中は薄暗く、開いた扉の向こうもまた暗い。
判然としない人影は、それでも幾度も耳にした声からそれが誰であるのかが知れた。
知れたと云っても男の素性は知らぬ。
男達の会話の中にあった名と、声と顔、おそらくこの里の上忍であろうと云う事しか識りようも無い。

『カカシ』と、この男は確かそう呼ばれていた。

薄暗がりの中開かれた扉は、開いた時と同様に濁った音を立てて閉じられる。
薄らと湿った静寂の中、足音が石の床を踏む。


「昨日髭の生えたでっかいのがまた来たデショ?どうせ後始末もしてなんだろうと思ってね、『洗い』に来たよ」


足音は目前で止んだ。
鎖に繋がれ、吊るされた女の項垂れた顔を掴んで仰がせる。


「ダイジョウブ?壊れてない?」


カカシの表情に心配し案じている様子は無い。
その口元には薄く笑みが浮かんでいる様だった。


「どうせまた無茶したんだろうから、あの髭熊」


仰がされた状態のまま、ぼんやりとカカシを見る。
昨日の薬がまだ残っている所為か僅かに視界が揺れるが、その端正な顔つきは見て取れた。
温厚そうな表情をして見せても、その実酷く冷淡に、非道な行為に及ぶ事は身を以て識っている。
抵抗する事も叶わないまま今日もまた繰り返されるのかと、女の表情には諦観に近いものが浮かんだ。


「そんな顔しないでよ、本当に手荒い事するのは来なくなったでしょ?毎回ちゃんと楽しませてもあげてるじゃない。
 今日だってわざわざ洗いにきて上げたんだからさ、髭熊の残滓」


そう云ってカカシは徐に秘唇に指を這わせ粘膜を嬲った。
ぐつりと湿った音を立てて内側に指が侵入する。


「足下に随分零しているけど中にもどうせまだ残ってるんでしょ?馬鹿みたいに量出すんだから、彼奴」


入り込んだ指は探るように中を掻き回した。
指で届く限りの奥へ、粘膜を擦り上げながら。
粘着質な音が音を吸収する物の無い石造りの楼内に韻く。
その音に混ざって漏れる、艶のある悲鳴とも嘆息ともつかぬ声。


「アンタもこんなに馬鹿みたいに濡らしてたら掃除の仕様も無いよね」


入り込んだ二本の指が内側の粘膜を器用に擦り上げる。
擦り上げる度に上がる声、熱の浮かんだ表情を見下ろしながらカカシは愉快そうに笑んだ。




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