‡箱館‡

□ダーリンは変わり者
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「もともとの原因は…野村の方です。」
「主計!てめぇ…」
土方がぎろりと野村を睨み付ける。
途端、野村が口を閉じ、顔をうつ向かせた。
「先程、私が先日新しく購入した小刀の手入れをしていた時に、野村がふざけてそれを奪い取りまして…。」
相馬が傍らの野村を鋭く睨み付ける。
「更にふざけて、廊下の壁に小刀を投げてナイフ投げの真似事をしているところに、春日さんがいらっしゃって、誤って野村が春日さんの頬に小刀をかすめさせてしまったんです。」
「なるほど…。」
土方が春日の頬に確かにある真新しい小さなかすり傷を認め、頷いた。
「すいません。」
私の不注意で…と、相馬が申し訳なさそうに頭を垂れる。
「お前が謝る事じゃねぇだろう、相馬。」
土方がぽんと頭を下げる相馬の肩を叩いた。
「御免なさい、土方さん。」
そう言って勢いよく頭を下げた野村に、土方が小さく微笑した。
「お前も、俺に謝る必要はないだろう。相馬と、それから春日にはちゃんと謝ったのか?」
「それなんですよ、土方さん!!」
下げた時と同じように勢いよく顔を上げ、野村が土方を見た。
どうやら話はそれだけでは終らないらしい。
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