‡箱館‡

□ダーリンは変わり者
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俺の恋人は変人です。




「ふざけんじゃねー!!!」
突然、平和だった五稜郭に大きな怒鳴り声が響き渡った。
声の上がった歩廊にいた者たちが驚いて一斉にその方向を見つめる。
「てめぇ、今日こそは斬る!!」
怒声の主、新撰組隊士・野村利三郎が怒髪天突く勢いで己の長刀に手を掛けた。
「落ち着け利三郎!」
今にも斬りかかりそうな野村を、同じく新撰組隊士・相馬主計が止める。
「止めるな!主計!!今日という今日は我慢ならねぇ!俺の刀の錆にしてやる!!」
怒り狂ってそう叫ぶ野村の様子に、正にその怒りの矛先を向けられている人物が馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「ふん。斬れるものなら斬ってみろ。まぁ、そんな度胸と実力が貴様にあるとしたらの話だがな。」
「なんだと春日ぁ…」
もはや野村の顔は憤怒で真っ赤になっている。
春日が嘲笑うように口の端を吊り上げ、左手でかちりと鯉口を切った。
「抜け、壬生狼。」
瞬間、野村の中で何かが切れる音がした。
「てめぇ!!!!」
抑える相馬をはね退け、野村が勢いよく刀を抜き放った。
「利三郎!!」
二人を止めようと、相馬も自刀に手をかける。
その直後だった。
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