‡箱館‡

□ダーリンは変わり者
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納得する理由を言えと言われると困る。
ただ、明らかにその行為は武士として、いや、立派な男子としてどうかと思うし、さっぱり意義が見い出せない。
春日の真っ直ぐな目がじっと土方を見つめる。
土方が再び小さく溜め息を吐き、言うつもりだった言葉とは別の言葉を紡いだ。
「…楽しいか?それ。」
「…楽しいと言うか…」
急に話を変えた土方に特に意見もせず、春日が思案げに自分の顎に手をやった。
「安心するんですよ。」
「安心?」
土方が怪訝な顔を春日に向けた。
「ええ。」
そこまで言ったところで、春日がちょうど後ろにあった姿見を振り返った。
「今日も俺は美しいな…って。」
惚れ惚れするようにそう言った春日に、土方が一際大きな溜め息を吐いた。
この男の自己陶酔癖にはほとほとついていけない。
「勿論、私なんかより土方さんのほうが何倍も何百倍も綺麗ですが。ああ…今日も一段とお美しいですね。」
そう言って春日がとろけるような笑みを浮かべた。
「それはよかったな。」
そんな、女子だったら誰もが見惚れる笑顔にそっけなく応え、土方がさっさと春日に背を向けた。
一応、誉め言葉であるはずのそれだが、春日の場合、日常用語なので何の感慨もわかない。
「あっ!待ってください、土方さん!!」
そんな土方を、慌てて春日が追い掛けるのだった。
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