‡箱館‡

□君のとなり
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「うっ、わ!?」
速足で歩いてきた勢いも手伝い、甲賀が背中から地面によろける。
「っ…」
甲賀が転倒による地面への強打を覚悟し目を瞑った。
しかし、甲賀が倒れこんだのは堅い地面ではなかった。
「…磐吉?」
「怪我ないか?源吾。」
目を開けると、甲賀は松岡の腕の中にいた。
「だい…丈夫…。」
心配そうな松岡の顔にそう言ってやると、松岡がほっとした笑顔を浮かべた。
「よかった。」
松岡に支えられ身体を起こし、助けてもらった礼を言い、甲賀が雪の積もっている方の道へと一歩、足を踏み出した。
「こうやって、お前が氷で足滑らせた時助けられるだろ。」
「えっ?」
甲賀が慌てて松岡を振り返る。
「お前の後ろ歩いてればさ。」
そう言って、松岡がにっと甲賀に笑いかけた。
「磐吉…。」
「だからさ、別にお前と散歩するのが嫌だとかそういうんじゃ全くないから。ってわけで、ほら、早く先…」
「行かないからな。」
早く先を歩け。
そう言おうとした松岡を遮り、甲賀が松岡の手を掴み歩き出した。
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