‡箱館‡

□君のとなり
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甲賀は他人に後ろを歩かれるのが好きじゃない。
自分のわからない位置から自分を見られてるっていうのが嫌だし、何より、背後から人より小柄な自分を見下ろされるというのが堪らなく嫌だった。
「別に…来たくなかったなら初めから断ればよかっただろ…。」
いつまでも松岡が甲賀の後ろを歩き続ける理由をそう解釈し、甲賀がぼそっと呟いた。
「はぁ?何でそうなるんだよ?」
まったく意味がわからないと言わんばかりの松岡の声が後ろから返ってくる。
「だって…磐吉ずっと後ろ歩いてるし…」
憤りから甲賀の歩く速度が速くなる。
「本当は散歩なんて来たくなかったんだろ?だから…」
嫌々後ろを付いてくるのではないか。
「あのなぁ…」
背後から松岡の溜め息混じりの声が届く。
「嫌なわけないだろ。むしろ嬉しくて仕方ないって。お前と二人きりで散歩なんてさ。」
大分速足で歩いているが、松岡の声は遠くならない。
どうやらちゃんと甲賀の速さに付いて来ているようだ。
「源吾、聞いてるか?俺がお前の後ろ歩く理由はなぁ…」
松岡がそう言いかけた瞬間、甲賀が突然雪から氷へと変化した道に足を滑らせた。
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