‡箱館‡

□慟哭
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「利三郎…。」
土方さんの手が、俺の服の裾を強く掴んだ。
「…ありがとう…。」
気を付けなければ聞こえないような小さな声に、俺は土方さんを抱く腕に、少しだけ力を込めた。



「ねぇ…土方さん…。」
暫くして、口を開いた俺に、土方さんがゆっくりと顔を上げた。
ほんの少しだけ、目元に朱が引かれている。
「土方さんは、俺が死んだら、泣いてくれますか?」
一瞬、土方さんがその黒水晶の瞳を見開いた。
「…泣くだろうな…。」
土方さんの顔に、再び泣き出しそうな微笑が浮かぶ。
「泣いて泣いて、涙渇れるまで泣いて…気が狂うほど咽び泣いて…。それからまた、戦場に立つだろうな…。」
ぞくっとした。
ああ、これが土方歳三。
気高く、強く、美しい。
俺が心底尊敬し、愛するひと。

俺の全て。

「土方さん。」
好きです。
大好きです。
愛しています。
「土方さん…。」
「利三郎…。」
その声に引き寄せられるように、俺はそっと土方さんに口付けた。




fin.
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