‡箱館‡

□慟哭
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突然大声を出した俺に、土方さんは軽く目を見開いた。
「土方さんが死ぬなんて…言葉の中であっても考えたくありません。」
土方さんの『死』など考えられない。
今の俺の世界はこのひとで形成されているのだ。
初めて会った時から。命を賭けようと決めた時から。
土方さんは俺の全てだった。
「馬鹿。こんなことで泣く奴があるか。」
興奮からか、この世の最悪を想像したせいか、いつの間にか俺は泣いていたらしい。
そんな俺の涙を、土方さんはそっと手で拭ってくれた。
「子供みたいな奴だな。お前は。」
「…堪えられませんよ…。」
「へっ?」
「さっきの質問の答えです。」
「えっ…?」
呆気に取られる土方さんに構わず、俺は続ける。
「貴方がこの世からいなくなってしまったら、泣くとか泣かないとかじゃなくて、堪えられません。」
土方さんの綺麗な漆黒の瞳がじっと俺を見つめるのを感じた。
「土方さんがいなくなったら…俺は生きていけません。」
俺の心も身体も…それこそ命さえ、全部貴方のものだから。
土方さんがいないなら、それは全て必要ない。
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