‡箱館‡

□ダーリンは変わり者
1ページ/11ページ



俺の恋人は変人です。




「春日…。」
朝の五稜郭。
陸軍隊隊長・春日左衛門の部屋の戸を開けたところで、土方が大きな溜め息を吐いた。
「土方さん!?」
突然現れた土方に、それまで熱心にあることをしていた春日が慌ててその側に駆け寄る。
「おはようございます。すいません、もうそんなお時間ですか?」
早口にそう言い、春日が着物の内ポケットから懐中時計を取り出す。
「いや。」
土方が軽く首を横に振る。
いつも春日が土方を迎えに土方の部屋を訪れる時間にはまだ少し早い。
「いつもより早く目が覚めたから、たまにはこっちからと思って…」
そこまで言ったところで、再び土方が溜め息を吐いた。
「お前さ、その日課、いいかげん止めたらどうだ…?」
土方がうんざりした様子で、先程まで春日が熱心にしていたこと、『鏡見』を指して言った。
何が楽しいのか、毎朝長時間かけて鏡に写った己の姿を眺めること、それが春日の日課となっている。
「何故ですか?」
不思議そうにそう訊かれ、土方が返答に詰まった。
「何故って…」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ